• HOME
  • 記事
  • 格闘技
  • 天心vs武尊のPPV売り上げが約27億円…格闘技ビジネスに新時代到来か?
感動を呼んだ天心vs武尊は興行規模も空前絶後のものとなった(写真提供・THE MATCH 2022)
感動を呼んだ天心vs武尊は興行規模も空前絶後のものとなった(写真提供・THE MATCH 2022)

天心vs武尊のPPV売り上げが約27億円…格闘技ビジネスに新時代到来か?

那須川天心(23)が武尊(30)に判定勝利した世紀の一戦(19日・東京ドーム)を生配信したABEMAの契約件数が50万件以上だったことが20日、発表された。今回の販売価格が5500円だったので、単純計算して約25億円の売り上げとなる。入場料収入は約27億円で、ここにグッズなどの売り上げ、地上波撤退を受けて、救世主的に冠スポンサーとなった「Yogibo」などのスポンサーフィーをプラスすれば、推定50億円を超えるビッグ興行。実行委員の榊原信行氏は「時代が動いた。新しいビジネススキームが誕生した」とコメントしたが、まさに天心vs武尊は、格闘技ビジネスの新しい扉さえ開いた。

入場収入だけで20億円

  空前絶後の興行となった。

 東京ドームは正真正銘のフルハウスとなり、発表された数字は5万6399人。チケットは話題となった300万円席から最低価格でも1万5000円と強気の設定だったが完売。ABEMAの放送内で、入場収入だけで20億円の売り上げがあったことが明かされた。

 会場はオープニングセレモニーから熱を帯びた。16試合すべてが中身の濃いファイトでメインの天心vs武尊は、天心が1ラウンドに左カウンターでダウンを奪うという衝撃の展開から判定で完勝した。最後まであきらめず打ち合いを挑んだ武尊の姿が感動を呼びドームの興奮は最高潮に達した。

 この日、一夜明け会見が行われ、大会実行委員の榊原氏が「本当に歴史的な1日になった。格闘技界がひとつになると、これだけの人たちの胸を震わせ思いを鷲掴みに出来る。2002年に国立競技場でDYNAMITEというイベントを行い、そのときも格闘技界が1つになったが、ひょっとするとその日の熱より昨日のほうがあったかもしれない」と語った。

 まさに約9万人の観客を集め、ボブ・サップがアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラに敗れ、柔道の五輪金メダリストの吉田秀彦がデビュー戦でホイス・グレイシーを締め落し、PRIDEの顔だった桜庭和志がK-1のトップファイターのミルコ・クロコップと対戦した、あの20年前の国立のイベントに優るとも劣らぬ熱気だった。

 さらに衝撃の発表があった。今回の試合を有料で生配信したABEMAの運営母体サイバーエージェントの執行役員である藤井琢倫氏が、契約件数が50万件以上だったことを発表したのである。

「グローバルスタンダードであるPPVでの視聴が多くの方に受け入れられた歴史の1ページになった」

 これまでは、ABEMAに限らず、他のPPV媒体でも契約件数が明かされることはなかった。それにはいつくかの理由が考えられるが、数字が芳しくないため、発表メリットがないということがひとつ。だが、今回は隠す必要がないくらいの数字が記録された。  今回の販売価格は5500円。単純計算して27億5000万円の売り上げだ。通常、売り上げをプロモーターとキャリアが折半するため、実行委員会に13億7500万円の収入があると推定される。地上波のフジテレビが5月31日に撤退を発表。動揺が走ったが、終わってみれば、地上波に頼らぬ、新たなビジネスモデルの扉を開くことになったのである。 「フジテレビさんが放送を辞退し地上波がなくなったことで一気に時代が動いた。我々格闘技界の新しいビジネススキームが誕生したと言っても過言ではない。日本だけが地上波の勢力が強い国だったが、欧米化というか、世界標準になるというか。ビジネスシーンにおいても歴史が動いた」  榊原氏も興奮気味だった。  まさに怪我の功名。地上波中継があればこれだけの数字は出なかっただろう。  天心や武尊は、無料の地上波中継が見送られ、子供たちや普段格闘技に興味のない層が見る機会が失われたことを嘆いたが、この日、急遽、ABEMAが一夜限りの無料放送を実施したことで、その無念もカバーされた。7月24日には、TOKYO MXで、試合映像だけでなく、その表裏を追いかけたスポーツドキュメンタリー番組も放映される。

関連記事一覧