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一夜明け会見の井上尚弥。フルラウンド戦ったとは思えない(写真・山口裕朗)
一夜明け会見の井上尚弥。フルラウンド戦ったとは思えない(写真・山口裕朗)

井上尚弥がアフマダリエフ戦の舞台裏を激白…「誰が衰えているって?」発言の“本当の意味”とクロフォードvsカネロ戦から受けた啓示…フェザー級で通用するスタイルを示したにもかかわらず…

 1月のイエジュン戦の被弾やカルデナス戦のダウンは、格の違いを見せなければならないという責任感に迫られ、真吾トレーナー曰く「力任せのねじ伏せにいくボクシング」になったのが理由。そこに囚われていれば、アフマダリエフの罠にはまる。この試合ではそういう邪念を一切排除していた。
「ファンに見せるとかを一切考えず、しっかりとポイントをピックアップして判定で勝つ作戦を立てて実行した」
「誰が衰えたって?」の思いを逆にリングに持ち込まなかったのが勝因だったのだ。だからこそ解放されたかのようにその言葉が口をついたのである。
 ボクシング界ではピークを過ぎた晩年のボクサーは「激闘型」に変わると言われている。スピードやキレがなくなるからだ。だが、井上は31戦目にして、まったく逆のスタイルを披露した。わかる人が見ればわかる内容で限界説を封じ込めた。
 ただこのボクシングは井上の新境地ではない。
「このスタイルを作り上げた感覚はない。新たなスタイルではなくいつでもやれる。元々やれるスタイルをチェイスして今回徹底した」
 直前に強いインスピレーションを受ける試合があった。米ラスベガスのアレジアント・スタジアムで7万人以上の観客を集めて行われたカネロvsクロフォードのビッグファイト。日本時間の午後2時くらいがゴングで、井上は、会場入りする前にホテルで、ライブ配信を見たという。
「クロフォードの戦い方が参考になった。雑に攻めてくるカネロに最後まで丁寧に戦った。直前に、ああいう試合を見れて少し重なる部分があった。自分がやりたいボクシングをクロフォードがやっていた。いいイメージになった」」
 大方の予想ではカネロがスーパーウエルター級から2階級上げてくるクロフォードをパワーでねじ伏せると見られていた。だが、クロフォードがジャブとスピードを生かしたアウトボクシングで、カネロを空回りさせ、接近戦でもカウンターを浴びせて3-0判定で勝利した。クロフォードはサウスポーでカネロはオーソドックス。井上とアフマダリエフとは逆だが、アウトボクシングでパワーに対抗する点は、似通っていて、井上はクロフォードの戦い方に自分を重ねたのだ。
 この2試合は米老舗「リング誌」が定めているパウンド・フォー・パウンドーパウンドランキングに影響を及ぼす。現在トップは、ヘビー級のオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)で、2位が井上、3位がクロフォード。男子ボクサーとしては史上初の3階級4団体統一王者となったクロフォードが井上を抜き、一気に1位に躍り出ると予想されているが、「もうここまできたら1、2、3(位の)どこでもいいですよ」と開き直っていた。
 4年前にアフマダリエフと対戦して5回TKOで敗れ、最強挑戦者の凄さを最も知る男である元IBF世界スーパーバンタム級王者の岩佐亮佑氏は「この無理に倒しにいかずポイントアウトするスタイルを徹底すれば誰も井上君にはかなわない。フェザー級でも十分に通用しますよ」と断言した。

 

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