なぜ亀田京之介は元3階級制覇の“問題児”カシメロに3-0判定勝利の“番狂わせ”を演じたのか…井上尚弥のアフマダリエフ戦を見習った「倒しにいかない」戦略が的中
実は9月19日に都内のABEMAのスタジオでカシメロと同席して行われたカード発表の記者会見であえてウソをついていた。
「1ラウンドから打ち合おうや」と挑発し、カシメロが「1ラウンド30秒で終わらせる」と“秒殺”を宣告すると、「終わらせろよ?逃げんなよ。こっちも1ラウンドKO決着」とやり返したが、これはすべて演技で作戦だった。その数分後の控室で京之介はこう明かしていた。
「打ち合うって言ったけどやりませんよ。足を使って足を最後まで止めない。KOでなく判定でいい。過去の映像を見ると足を使われている選手には手も出ていない。一発だけに気をつけておけばフルマークで勝てる。一発をもらうとイラっとして打ち合ってしまうかもしれないが、気をつけるのはそこだけ」
あえて挑発をして、カシメロを前に出てこさせて、空回りさせる戦略をこの時点でスタートさせていたのである。
そしてこう続けた。
「井上チャンピオンがアフマダリエフ戦でやった、あのボクシングですよ」
参考にしたのは、スーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(大橋)が9月14日に名古屋でのムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)戦で、勝ちに徹した技術戦を仕掛けて3-0判定勝利したスタイルだった。井上は、終始「倒したくても倒さない」とブレーキをかけていた。
亀田も、この日、インターバルの度に、セコンドから「いくな。これでいいから」と釘をさされて、強引にいかず、足を使いカウンターだけに集中する勝ちに徹したボクシングを10ラウンド貫いた。
これまで亀田は、SNSなどで井上に対してリスペクトに欠く批判的なコメントを発して、時にはSNSを炎上させもした。
元2階級制覇王者のルイス・ネリ(メキシコ)、12月27日に井上とサウジアラビアで対戦するWBC世界スーパーバンタム級1位のアラン・ピカソ(メキシコ)に連敗。SNSでバッシングを浴びて「ここで負けているようじゃ世界なんか取られへんと病んだ」というほど落ち込み、引退さえ考えた。その挫折を経て亀田の考え方は変わった。
5月に結婚し6月に長男の虎之介君が誕生したことも、亀田のボクシング人生にとって大きなエポックとなった。

