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武尊が往年のキレと迫力を取り戻した(写真提供・ ONE Championship)
武尊が往年のキレと迫力を取り戻した(写真提供・ ONE Championship)

「衰えではない。次が過去最強を作れる最後の1試合」なぜ武尊はTKOで劇的再起を飾るも来年4月29日「ONE175」のロッタンとの再戦での引退を電撃発表したのか?

 アジア最大を標榜している格闘技イベント「ONE173」が16日、有明アリーナで行われ、ONEキックボクシングルールフライ級ノンタイトル戦で武尊(34、team VASILEUS )が再起戦に臨み、デニス・ピューリック(40、カナダ/ボスニア・ヘルツェゴビナ)に2ラウンド2分49秒TKO勝利を収めた。3度のダウンを奪い、最後は右フック4連打で仕留めた武尊は号泣。次戦を最後に引退することをサプライズ表明し、対戦相手に3月に対戦してTKO負けを喫していた元ONEフライ級ムエタイ王者のロッタン・ジットムアンノン(28、タイ)を指名した。ロッタンもケージに入り対戦を了承。チャトリ・シットヨートンCEOは来年4月29日に日本で開催予定の「ONE175」で武尊vsロッタンの引退マッチを行うことを約束した。

 

武尊が次戦の引退試合にロッタンとの再戦を要望(写真提供・ ONE Championship)

 

 有明アリーナを埋めたファンが総立ちになった。2ラウンドだ。左ハイキックを浴びたピューリックが「来い!」と挑発してくると武尊にスイッチが入った。右フックを4連発。ピューリックがその威力にのまれて崩れるようにしてダウンするとレフェリーはTKOを宣言した。
 武尊は何やら雄叫びをあげた。
 ケージによじ登っても吠え、トップに仁王立ちすると、バック転を決めた。勝ち名乗りを受ける時にはもう号泣していた。
「前回、ロッタン選手に1ラウンドで負けちゃって、日本中のファン、世界中のファンが応援してくれた思いを裏切ってしまった…」
ここまで言うと涙で言葉に詰まった。
「裏切ったままでは、終われない。死ぬ気で勝つつもりで練習してきました」
 次戦でのロッタンとの再戦について聞かれ、武尊は「その前に一個だけ…」と言い、何かためらったように時間を置いた。
 そして衝撃の発表をした。
「僕は次の試合で現役を引退します」
 続けてファンにこう呼びかけた。
「みんなの期待を裏切らないでやってきたと思う。現役最後までみんなの期待を裏切らないので、ロッタン選手が受けてくれるなら、最後の試合をロッタン選手と思いっきり戦いたい。最高の勝ち方で勝って、武尊を応援している人たちに応援して良かったと思う試合にするので応援に来てください」
 その引退試合の相手に3月の「ONE172」で秒殺された宿敵のロッタンを指名した。
 ロッタンは、この日、ONEフライ級ムエタイ世界王座戦でノンオー・ハマ(タイ)と対戦する予定だったが、ハイドレーションテストと計量をクリアした後の体調不良で病院に緊急搬送され、試合が中止になっていた。ワインカラーのジャケットを着てリングサイドにいたが、ケージ内に入り、マイクを持って「おめでとう」と武尊の勝利を称え、「僕でよければ受けたい」と了承。ファンが大歓声でそのアンサーを歓迎した。
 試合後、チャトリCEOは来年4月29日に日本で開催予定の「ONE175」でその「武尊vsロッタン2」の引退マッチをセットアップすることを明かした。
 武尊も「一旦、体と相談して…たぶん間に合うと思う」と快諾した。
 ロッタンに屈辱の秒殺負けを喫した武尊はその試合2週間前に左肋骨と胸骨の2箇所を骨折してドクターストップの状態だったことが判明していた。
「昔から一回負けたら引退すると、毎試合思ってやっていた。ロッタンに負けた時に試合(内容)もそう、試合前のコンディションだったり、全部を含めて、そろそろかなと考えていた」
 ロッタン戦の壮絶なTKO負けが引退のきっかけになっていた。
「現役で2連敗をしたことはない。もしONEで2連敗したなら、今日負けていたら、今日引退していた。ロッタンを目標にそのために死にもの狂いで生き残った。ロッタンが(次戦での引退試合を)受けてくれれば、最後、最高のコンディションを作って必ず勝って終わりたい」
 そこまでの壮絶な思いがこの試合にはあった。

 

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