「オレ嫌われてんのかな」異例の大ブーイングを浴びた那須川天心は何が狂って井上拓真に“完敗”したのか…“天心パパ”は「倒しにいっていない」と悔し涙を浮かべて激怒の説教
プロボクシングのWBC世界バンタム級王座決定戦が24日、トヨタアリーナ東京で行われ同級1位の那須川天心(27、帝拳)が元WBA世界同級王者で同級2位の井上拓真(29、大橋)に0-3判定で敗れ、プロ8戦目にしての世界初挑戦は実らなかった。天心は敗因に「迷い」「経験の差」をあげたが「TEPPEN GUM」会長で父の弘幸さん(55)は「なぜ倒しにいかなかったのか」と悔し涙を浮かべて息子のファイトを叱った。天心は再起を誓い、リング上で拓真に再戦を申し入れた。

何が天心を狂わせたのか。
試合後のプレスルーム。
天心は進行係の「最後の質問で」の会見終了をうながす声を「いっぱいやりましょう」と遮り、20分以上語り続けた。
「世界戦って12ラウンドやって傷だらけというイメージだったが、傷も効いたパンチもない。ちょっと傷つけてくれた方が良かった気もする」
笑いを誘ったが、それは精一杯の強がりだった。
プロ8戦目にしての初の世界挑戦は、拓真という大きな壁に跳ね返された。試合終了のゴングが鳴ると、ロープに手をやり下を向きうなだれた。本田明彦会長に促され、井上陣営に出向き、拓真、真吾トレーナー、そして尚弥に感謝の意を伝えて握手した。
116-112が2人、117-111が1人の大差判定負けだった。
「なんだろうな、ここから始まるなあ、という感覚になった。凄く人生はおもろいなって、率直に思いましたね」
そして、リングに正座、四方に頭を下げた。
「応援している人に勝ちという姿を見せることができず、初めて負けて暗い思いで帰る。そういう思いをさせたことに申し訳ない気持ちがある。これからの人生。一緒に生きてもらいたい」
涙ぐんでいるように見えた。
スタートは天心のペースだった。自分の遠い距離をとり、余裕しゃくしゃくのカウンター戦法。1ラウンドの終了間際に左のロングをヒットさせ、両手をくるくる回してジャンプしてコーナーへ戻った。2ラウンドにも、右のカウンターフックを浴びせ、拓真の膝がぐらついた。
天心はそこで勝負をかけなかった。
「目が生きていた。どう攻めようかと警戒すぎた。フェイントもかけてきていた。そこも相手が上手かった。経験の差。かっこよくないかもしれないが、自分はいけなかった」
天心ワールドはそこまでだった。
3ラウンドからガラっと展開が変わる。拓真にテンポアップされ、限界線を越えられて距離をつめられた。ノーモーションの右、ボデイのリターンに対して右を返され、流れが変わった。
4ラウンド後の公開採点は3者が「38-38」のドロー。
「相手がくるだろうなと思った。前にプレッシャーをかけてくるのでしっかりと印象をとっていかないとなという気持ちがあった」
しかし天心は下がる一方で、攻撃よりもディフェンスに意識が傾いた。6ラウンドに足を止めて流れを変えようとした。7ラウンドには、頭をつけてのインファイトを挑んだ。しかし、逆にアッパーとボディブローを食らい、天心の左は空を切った。

