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天心はファンに土下座して敗戦を謝罪した(写真・山口裕朗)
天心はファンに土下座して敗戦を謝罪した(写真・山口裕朗)

「オレ嫌われてんのかな」異例の大ブーイングを浴びた那須川天心は何が狂って井上拓真に“完敗”したのか…“天心パパ”は「倒しにいっていない」と悔し涙を浮かべて激怒の説教

 10ラウンドにはノーガード戦法を仕掛けた。トリッキーな動きで誘ってみたが、セコンドから「深追いするな。大振りはするな」と釘を刺されている拓真は、天心が狙うカウンターの罠に入り込んでこない。拓真には、終始プレッシャーをかけられていたが、無茶な前進を続けてパンチを振り回してくることはなく、天心の最後の賭けも空回りした。
 天心は漫画「はじめの一歩」に3ラウンド勝負のキックとは違い、ボクシングには「12ラウンドまったく攻めない」という選択肢があることが書かれていた話を読み「こういう展開があるんだ」と、目が点になった話を持ち出した。
「全体的に上手。本当に勝ちにきていた。もっとくるかな、と思ってけれどこない。はじめの一歩のは展開になっていましたね」
 11ラウンドには右アッパーを4連発、3連発と浴びた。逆に天心の攻撃は、ワンパターン。サイドに動き、多彩に相手の隙をピンポイントで狙う打つ、天性の格闘センスが消えてしまっていた。
 拓真は昨年10月に堤聖也(角海老宝石)に敗れ王座から転落した試合に比べて、まるで別人のボクシングをしたが、天心もまたここまでの7戦とは別人だった。拓真のキャリアにそうさせられたとも言える。
 天心は本物ではなかったのか。プロ7戦で骨のある相手は元WBO世界同級王者のジェイソン・モロニー(豪州)くらいしかなかったキャリアでの世界戦は無謀な挑戦だったのか。いや決してそうではない。この敗戦で、天心の価値が下がることはない。
 拓真は、試合後「天心は強かった」と称えた。
「ずっと無敗できているだけあって勘がいい。目が良かった。絶妙の距離感で外す。今までにないタイプ。キャリアを積めば、もっともっと強くなる」
 大橋ジムカラーの赤いTシャツを着て陣営の一人として応援していたWBO世界同級王座から陥落していた武居由樹も天心の戦いをこう評した。
「拓真さんはさすがでした。引き出しの多さが圧倒的に違った。後半になればなるほど天心君は、ワンパターンにされてしまっていた。気持ちで拓真さんが上回った。でもあそこまでやる天心君も凄い。あの拓真さんにジャブを当てるのは相当凄いこと。いい試合だった」
 そして「自分もそう。ボクシングは甘くないと感じた。お互いに再起して、どこかでぶつかることができれば」と呼びかけた。
 天心は、不敗神話にピリオドが打たれた。
「悔しいですよ。前を見ていかないといけない。こういうことはいつかあると思って生きている。負けたことで世の中の人は色々言うのかもしれないが、自信もって仕上げてきた。悔いはない。またさらにボクシングが好きになった一戦でもある、また明日も人生が続く」
 こうも言った。

 

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