那須川天心の弱点がバレていた…「接近戦に弱い」大橋会長が明かす井上拓真の勝利秘話…「天心と武居との再起戦も面白い」
プロボクシングのWBC王座決定戦で同級1位の那須川天心(27、帝拳)を判定で破って新王者に輝いた井上拓真(29、大橋)が25日、大橋ジムで一夜明け会見を行った。1、2ラウンドの劣勢からの逆転勝利だったが、大橋秀行会長(60)が天心の弱点を見つけて万全の対策を練っていたことを明かした。大橋会長は天心を「いずれ世界王者になる」と評価した上で、9月にWBO世界同級王座から陥落した武居由樹(29、大橋)との世界再挑戦をかけたサバイバルマッチを提案した。

WBCと特別な「サムライベルト」の2つのベルトを前にした一夜明け会見。拓真は午前中にフジテレビ系の情報番組への生出演があったため一睡もしていない。会見までの空き時間を使って髪の毛の色を黒から金メッシュ入りのブラウンへ変えていた。
試合後のバックステージで天心と話す機会があり、「一発蹴っていいですか?」とのオファーを「それは勘弁してよ」と断ったエピソードを紹介し、「作戦がはまった」と、天心との名勝負を振り返った。
秘話を明かしたのは大橋会長だ。
「1、2ラウンドの展開からよく逆転できたなと思う」
1、2ラウンドは、天心の遠い距離にパンチが届かず、カウンター戦略の罠にはまった。1ラウンドの終了間際に左のオーバーフックをヒットされ、2ラウンドには、カウンターの右フックを浴びて膝が揺れた。拓真も「効いてはいないけれど、ガクっときた」という。
そのインターバルで真吾トレーナーから「ジリジリ前へ詰めていこう」とのアドバイスを受けて、3ラウンドからスタイルを切り替えた。
「3ラウンドでペースを変えたのが勝因。あのままズルズルいったらやばかった」
しかも、ただ漠然と前へいったわけではなかった。
まずリズムをハイテンポに変えて距離を詰めながらも出入りにメリハリをつけた。真吾トレーナーが「プレッシャー、圧をかけるが、ジリジリ淡々とやり、いつでも引ける状態」という細やかなスキル。そこにフェイントを交え、ただガムシャラに前へはいかなかった。
「意識の問題。感情的にいくと(駆け引きが)なくなる。ブレーキをかけながら感情的にならず自分のボクシングを淡々とやる。練習でやってきたことがそのまま出せた」と拓真。
「試合中ずっと聞こえていた」という兄の尚弥が「いいよ、いいよ。天心が対応できていないから」と大声で檄を飛ばしていたが、そのキャリアを生かした変幻自在な詰め方に天心は明らかに戸惑っていた。
そして終盤になると真吾トレーナーから「追うな」の指示が飛んだ。8ラウンドの公開採点で、2者が拓真を支持。なんとか状況を打破しようと天心は10ラウンドからノーガード戦法のトリッキーな動きで誘いにきた。
「向こうが下がるならポイントは取れない。イノシシのようになって無理して追いかけてミスをすることはない」
真吾トレーナーがそう言うミスとはカウンターパンチをもらう隙を作ることだ。
もうポイントではリードしていたが、11ラウンドのゴングと同時に拓真は、まるで「KOしろ」のGOサインが出ていたかのようにラッシュをかけた。至近距離から、右のアッパーを4連発、3連発と食らわせて勝利を決定的にした。
「体が勝手にいった。ポイントが取れているのはわかっていたが、やるべきことを淡々とやるのがテーマだった。勝っていようがポイントを気にせずペースを変えずにいくのがテーマ。それをやっただけ」

