ドネアに挑むWBA王者の堤聖也が井岡一翔の発言に「火がついた」…激動のバンタム級で「完成度は井上拓真が上」と認めるも「こけたら終わる」の危機感を持ちレジェンド撃破へ
プロボクシングのWBA世界バンタム級正規王者の堤聖也(29、角海老宝石)が17日の両国での5階級制覇王者で同級暫定王者のノニト・ドネア(43、フィリピン)との団体内統一戦に向けての公開練習を3日、都内で行った。しっかりと下半身が仕上がり、「気が付いたらポイント勝ちしている」と準備の整っていることを示した。堤は大晦日にWBA世界同級挑戦者決定戦を行うことが発表された同級9位の井岡一翔(36、志成)の発言に対する考えや、因縁のある井上拓真(29、大橋)が那須川天心(27、帝拳)を判定で下したWBC世界同級王座決定戦から得た刺激などについても語り尽くした。
元世界王者がうなった下半身の仕上がり
おそらく堤の試合前行事としては過去最多の報道陣の人数だった。それほどドネア戦への注目度は高い。公開練習では、ビンテージの“アメカジ”好きで知られる堤は、「オリジナルです。ちょっと重いんですけど」という「GLORY OF BANTAMS(バンタムの栄光)」と書かれた厚手のグレーのパーカーを着てシャドー。次に「堤一派」と書かれたTシャツ姿になり、時には激しく連打する気合十分のミット打ちを披露した。
ふくらはぎと太腿部の筋肉が盛り上がり、力強いステップを踏んだ。どっしりとした下半身に上体が乗っているようなバランスのいい動き。
練習をチェックにきた元WBO世界スーパーフェザー級王者の伊藤雅雪氏が「下半身が安定している。相当作り上げてきたと思う。仕上がりは良さそう」と思わず口にした。
担当の石原雄太トレーナーも「実は、比嘉戦の時は、故障などがあり思ったように下半身を作れなかったんです。今回はそこができた。下半身の仕上がりがこの試合のポイントになると思っている」と明かした。
前へ。
1ラウンドから12ラウンドまでフルスロットルで行く堤のボクシングの生命線である下半身がこれまで以上に仕上がっている。
また休養王者となった理由の目の手術を終えたことで「見えにくい」不安も解消された。
「ドネアと戦うのはワクワクする材料ではあるが、それと同じぐらい怖い。ボクサーとしての怖さもだし、ここで自分の人生がどうなるかという部分の怖さもある。そういう感情を全部しっかりと受け止めて大切にしながら準備した」
そう覚悟を語った堤は、「タフな試合になると思っている。1個の判断をミスったり、ちょっとずれたらぶっ倒される。なおかつ、こっちが当てても向こうが効いたりするイメージはあまりない。ハイリスク、ローリターン。そういう試合かな」と本音を明かした。
ドネアの43歳の年齢をマイナス要素ととるか、今なお5階級制覇のキャリアを健在だととるか。堤は後者と判断した。
石原トレーナーも警戒心を持つ。
「待ちの選手。強いカウンターをしっかりと打ってくる。瞬間的な瞬発力が凄くあって、重心移動がうまく強いカウンターを同時に打ってくる。結構危険な相手」
スタートから堤がプレスをかける展開になるだろう。
その「入り方」に工夫を仕込んでおかねば“フィリピンの閃光”と呼ばれる左フックの餌食になりかねない。スーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(大橋)と、1度目に対戦した際、眼窩底骨折を負わせたドネアの伝家の宝刀だ。
「例えば井上尚弥選手との2戦目。2ラウンド(TKO負け)で世間的に見たら、瞬殺されたような試合で、フラフラに効かされている時でもいいフックを出している。あれは井上尚弥さんだからカバーできているが、細かい部分の怖さはある」

