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王者の井岡一翔と挑戦者のぺレスが15秒のフェイスオフ(写真・山口裕朗)
王者の井岡一翔と挑戦者のぺレスが15秒のフェイスオフ(写真・山口裕朗)

なぜ井岡一翔は井上尚弥が偉業を達成したタパレス戦を見なかったのか…モンスターに並ばれた世界戦最多勝利記録「21」の更新にも執着せず

 WBA世界スーパーフライ級王者、井岡一翔(34、志成)が挑戦者の同級6位、ホスベル・ペレス(28、ベネズエラ)を大晦日に迎えるタイトルマッチ(大田区総合体育館)の調印式並びグローブチェックが29日、渋谷区のABEMAタワーで行われた。これまで世界戦最多勝利数記録「21」を井岡が持っていたが26日に史上2人目の2階級4団体統一の偉業を成し遂げた井上尚弥(30、大橋)に並ばれた。井岡が防衛に成功すれば、再び最多記録を更新して単独トップに立つが、「試合は見ていないが、素晴らしいこと。記録は後から自然とついくるもので執着はない」との胸の内を明かした。

 「現状維持ではなく毎試合、進化、成長を求めている」

 井岡はガムを噛んでいた。
「残り1.5キロ」という減量も楽というわけではないのだろう。
井岡が挑戦者のぺレスと対面するのは初。
「印象は特にない。今はまだ自分のやるべきことがある。自分自身に集中している」
 通訳を通じて、その発言を聞いたペレスは薄笑いを浮かべて「自分も井岡と同じ。自分自身に集中している。タイトルはいただかせてもらう」と返した。
 前日会見では、ペレスと約1か月半前からタッグを組んだWBC世界同級王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)のトレーナーであるホセ・アルフレッド・カバジェロ氏が、井岡の弱点を「正面での打ち合いを嫌がる」「34歳という年齢が弱点」「前に出るより距離を取りたがる」と指摘。「打ち合いに持ち込む」という作戦まで明かした。
 試合前に手の内をさらけ出すのは異例とも言える。
 だが、井岡は「その報道は見ていない」と一蹴。
 筆者が、その指摘した中身を要約して伝えたが、何の動揺もなかった。
「対戦相手が研究するのは当然、あたり前のこと。それを公表して、それが真意なのかどうなのかもわからない。気にする気持ちもない。自分たちがこの試合に準備していることを遂行するだけと思っているので、会見で言ったことだったり、発言に対して、何も思う気持ちはない」
 冷静に受け入れ、動揺しない理由をこう説明した。
「毎試合、現状維持ではなく、常に自分とチームと向き合って進化、成長を求めてやってきている。今回試合でも前回より成長した姿を見せたいと思っている。だから自分の過去だったり、そういう発言は気にならない」
 23日に米国から来日した井岡の専属トレーナーであるイスマエル・サラス氏も「私たちは、特に相手の欠点や弱点をあまり見ない。私達は私達のやり方でやっている」と相手にしていなかった。
 井岡が対戦を熱望しているエストラーダのトレーナー兼マネージャーを務めていて、サラストレーナーとも顔見知りのカバジェロ氏も負けてはいなかった。
「ライバルを研究するのはとても自然な話。、リングの上では、プランA、B、Cと臨機応変に対応していかなくてはいけない。研究した弱点は、相手になるボクサーのスタイルによっても違ってくる。何がどうなるかわからない。熱情をもって練習の成果をすべて出すことが勝利につながる」
 戦前の予想は井岡が圧倒有利。エストラーダ戦が流れたモチベーション部分が心配ではあるが、有利な側に隙がなければ“番狂わせ”が起きる可能性は低くなる。

 

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