「(井上尚弥)と戦えないのなら寂しい」中谷潤人が“階級の壁”にぶつかってモンスターのスパー相手をクビになったメキシカンにまさかの大苦戦で薄氷判定勝利
プロボクシングの「The Ring V: Night of the Samurai」が27日、サウジアラビア・リヤドで行われ、スーパーバンタム級の3団体で1位にランキングされている中谷潤人(27、M.T)が転級初戦でWBC10位のセバスチャン・ヘルナンデス(25、メキシコ)と対戦して3-0判定勝利した。ヘルナンデスの前進と手数を止めることができずにバッティングとパンチで右目が塞がるほど腫らした中谷は、テストマッチでいきなり“階級の壁”にぶつかった。
右目はほぼ塞がってしまっていた。中盤に受けたバッティングにパンチの被弾も重なり、“お岩さん状態”となった。
「日頃から(目が)塞がったイメージをしている。実際、見えづらくなったが、慌てることなくやれた」
こういう準備をしているのが中谷とルディ・ヘルナンデストレーナーのコンビだ。
最終ラウンド。中谷は、もうKO決着を捨てポイントを取りにいっていた。強打は放たず連打をまとめて手数で3人のジャッジへアピ―ルした。
「すごくタフだった。1ラウンド、1ラウンド、しっかりと対応していくことにフォーカスしていたので採点を気にせず、この選手に勝つ強い気持ちで向き合った」
それでも陣営は計算していたのだろう。
そして試合終了のゴング。
「(採点は)与えられるもの。やりきったのでスッキリしていた」
2人が115-113、1人が118-111の3-0判定勝利。115-113とつけた2人は最終ラウンドで中谷を支持していた。もしこのラウンドを失っていれば2人がドローに終わる薄氷の判定勝利だった。
序盤は強烈な左ストレート、左フックを炸裂させた。だが、そこを我慢されると、中盤からスロースターターのヘルナンデスのエンジンがかかり始めた。
ヘルナンデスは、昨年11月に来日して、仮想サム・グッドマン(豪州)として井上のスパーリングパートナーを務めた。だが、滅多打ちにされ、数日でモンスターのパートナーは“お役御免”となり、他の大橋ジムのボクサーの相手をしていた。
大橋秀行会長は「3、4ラウンドを過ぎると、人が変わったかのように右肩上がりに強くなっていくタイプのボクサー。そこだけは注意することを機会があれば中谷選手に伝えたい」と話していた。
まさにそのパターンでヘルナンデスが前へ出てきた。中谷はそのエンドレスに続く前進と手数に悩まされた。
足を使ってサイドからの攻撃を仕掛けた。それが通じないとみるや堂々と頭をつけてインファイトに付き合い、アッパーを連発させた。それでもヘルナンデスの前進は止められない。今度は距離を作って、ワンツーを叩き込む戦法に変えてみたが、それでも深刻なダメージを与えることができなかった。最後は根負けした中谷がクリンチに逃げる珍しいシーンまであった。
中谷は3階級制覇に照準を定めている。
階級が上がれば、KO率が下がる選手と減量苦から解放されてパフォーマンスが上がる選手に区別される。
中谷は「僕はきつくなって上げている。バンタムよりスーパーバンタムが絶対いいという感覚を今持って調整できている。そういう不安要素は試される部分ではあるが、楽しんでパフォーマンスができればいい」と語っていた。

