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井上尚弥は、最終ゴールがフェザー級であることや2027年の引退を明かしている(写真・山口裕朗)
井上尚弥は、最終ゴールがフェザー級であることや2027年の引退を明かしている(写真・山口裕朗)

「井上尚弥に階級の壁なんかない」“名参謀”真吾トレーナーが語るモンスターの“未来”と引退問題…「今から中谷選手の試合をイメージしてどうするんですか?」

 プロボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(32、大橋)が米ラスベガスでWBA1位のラモン・カルデナス(29、米国)を8回逆転TKOで破った衝撃の余波は、今なお続いている。父で専属トレーナーの真吾氏(53)に聞く激闘の真実。真吾トレーナーは井上の未来をどう考えているのだろうか。

 

井上尚弥と真吾トレーナーの名コンビ(写真・山口裕朗)

 「スーパーバンタム級が一番いいんじゃないですか?」

 井上の“今後3試合”のプランはほぼ固まっている。
 次戦は9月14日に名古屋の1万7000人収容の新設会場「IGアリーナ」でWBA世界同級暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)と戦い、その強敵を撃破すれば、12月にサウジアラビアでの1階級上のWBA世界フェザー級王者、ニック・ボール(英国)への挑戦計画がある。昨年3年30億円の大型契約を結んだ「リヤドシーズン」の主催マッチだ。そして来年5月に東京ドームで再び階級をスーパーバンタム級に戻してWBC世界バンタム級王者、中谷潤人(M.T)とのスーパーマッチが控える。
 ここまで先が予定されているのは非常に珍しいケース。大橋秀行会長は「ダメージがないから計画できるし、井上がキャリア後半にやるべきはファンが望む試合」とその理由を明かしていた。
 井上が、4年ぶりに米ラスベガスに再上陸したカルデナス戦前のファイトウィークでは、連日、米メディアの取材を受けた。その中で必ず聞かれたのが、井上はどこまで階級を上げるつもりなのかという点と、そのタイミングについてだ。
 井上は「最終目標としてひとつ上のフェザー級には、チャレンジしていきたいと思っています」と答え、その後、米老舗「リング誌」のインタビューでも「フェザー級が限界」と語り、日本人初の5階級制覇となるフェザー級の制覇が最終ゴールになることを明かしていた。
 カルデナス戦後の会見でも、フェザー級転向への考えを聞かれ、「できる限りこの階級(スーパーバンタム級)で戦います」とも断言していた。
 スパーリングでは、ライト級のボクサーと互角にやりあっていることから、大橋会長は「スーパーフェザー級でもいける」と可能性を示すなど、オスカー・デラホーヤ(米国)、マニー・パッキャオ(フィリピン)の2人しか達成していない6階級制覇への夢もあった。だが、32歳の井上は、極めて現実的に5階級制覇で打ち止めになることを示唆したのである。 
 真吾トレーナーもその方針を支持した。
「スーパーバンタム級が一番いいんじゃないですか。上背がないですからね。本人もパワーが通用するのは、フェザー級までと思っているんじゃないですか」
 そしてその理由をこう説明した。
「自分は昔から言っていますが、もっと上(の階級)にいっても、冷静にヒット&アウェーをしてポイント勝負の戦いをすれば誰にも負けませんよ。でもそういう戦いは尚のプライドが許さない。体がパンパンに膨れあがってアウトボクシングをする尚って誰も見たくないじゃないですか?そもそも尚の体(哲学)が許さない。ただフェザーでは、フルマックスで練習して挑むことになる。そしてそこでもし勝てなかったとしても、それは階級の壁じゃなく、相手が強かっただけなんですよ」
 判定勝利を徹底すれば、6階級制覇も可能だろう。だが、そういうボクシングは井上家の信条からは外れることになる。だから「フェザー級が限界」なのだ。
 それはフィジカルを前面に出す戦略を取ってきたカルデナスに2回にダウンを奪われるなど、苦戦したことで、より鮮明になったのかもしれない。

 

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