
衝撃の“新怪物”!“神の左”を継承する増田陸は87秒“ワンパンKO”で那須川天心よりもインパクトを残した…狙うは「WBA堤聖也へのリベンジと中谷潤人が持つWBCのベルト」
プロボクシングの「Prime Video Boxing13」(8日・有明コロシアム)に“神の左”の継承者が現れた。日本バンタム級王者の増田陸(27、帝拳)だ。バンタム級10回戦でWBA世界11位のミシェル・バンケス(34、ベネズエラ)をストレート一発で1ラウンド1分27秒KOでキャンバスに沈めた。世界前哨戦で存在感をアピール。帝拳の“レジェンド”元WBC世界バンタム級王者、山中慎介氏(42)のKOを量産した左ストレートを継承する男として期待と注目が集まっている。
山中の左はアイスピックで増田の左は日本刀
誰よりも有明コロシアムでインパクトを残した。WBC王者の中谷潤人がIBF王者の西田凌佑を病院送りにし、那須川天心が、世界6位をシャットアウト、プロ2戦目で坪井智也がWBOアジアパシフィック王座を獲得するという、バンタム級ウォーズの中で、そのオープニングファイトを務めた増田が、衝撃の1ラウンドKO勝利を飾ったのだ。
試合開始のゴングからわずか87秒。増田が放った1発目の左ストレートがベネズエラから来た世界ランカーの顔面を捉えると、まるでスローモーションを見ているかのようにドタっと倒れた。一度は立ち上がろうとしたが足がよろけて再びダウン。レフェリーは10カウントを数えた。正真正銘の“ワンパンKO”である。
「まだ興奮は収まらないんですけど、最高の試合でした」
渋い声で語る増田は興奮しているようには見えなかった。
右のジャブをひとつ打って誘い、バンケスが左ジャブで反応したところに打ち込んだ左ストレートだった。
「上を意識させてボディで倒すプランを考えていたけど、上が当たって倒れた。ジャブで距離感をはかっていた。思い切り打ったパンチではなかった。もうちょっとやりたかったというのもある」
おそらくバンケスは、その左が見えていなかったのだろう。
コンビを組む大和心トレーナーは「映像を見ると相手は突然飛び込んできたり、タフなボクサー。あんな綺麗に終わるとは思っていなかった。あの崩れ方だと立てないと思った」という。
バンケスは、増田の左をかなり警戒し、後傾スタイルで様子を見ていた。
だが、増田陣営は、左を消す布石を打っていた。
大和トレーナーが明かす。
「あれだけ左を使わないのは初めてだけど、リードをついて左を忘れさせる、見えない形にして打った。正面で面と向かって、ずっとリードを打たれると(左への)意識がなくなるんですよ。10秒では意識は過去に戻らない。そこで見えないところからスコンと左が来る。見えていると耐えれるんですけどね。だからああいう効き方になる」
現役時代は、スピード系のサウスポーで、日本バンタム級王者、OPBF東洋太平洋スーパーバンタム級王者だった大和トレーナーだからこそ、左の生かし方を熟知している。
大和トレーナーは、あの“ゴッドレフト”の呼び名で、バンタム級の歴史に名を刻んだ山中氏ともコンビを組んでいた。あの山中の“神の左”と増田の“シン神の左”の比較をお願いした。
「山中は、スコーンと1本で抜く感じだが、増田は、振りや角度で(大きな面)打ち砕く。効かせるんじゃなく芯まで通して骨まで砕くイメージ。言ってみれば、山中の左がアイスピックやナイフなら、増田の左は日本刀」
言い得て妙。「理想の勝ち方はKO勝利。KOを狙う」と、常に宣言してここまで8勝すべてでKO決着している増田は“神の左”を超える可能性がある継承者なのかもしれない。