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難攻不落の山本から古巣に恩返しの決勝タイムリーを放った三ツ俣(資料写真・黒田史夫)
難攻不落の山本から古巣に恩返しの決勝タイムリーを放った三ツ俣(資料写真・黒田史夫)

なぜ立浪竜はオリ山本の攻略に成功したのか…古巣に恩返しの決勝打を放った三ツ俣に授けられていた秘策とは?

 

中日が28日、京セラドーム大阪で行われた交流戦のオリックス戦で、昨季の沢村賞投手、山本由伸(23)を攻略して4-1で快勝、今季4度目の3連勝を飾った。勝負を決めたのは、8回に決勝タイムリーを放った元オリックスの三ツ俣大樹(30)。なぜ立浪竜は難攻不落の“5冠王”を攻略できたのか。

「(バットにボールが)当たったのが奇跡」

 立浪監督から授けられた秘策があった。

「真っ直ぐか、フォークか。自分で(狙い球を)決めて腹くくっていけ!」   

 1-1で迎えた8回二死一、二塁。マウンドに仁王立ちする難攻不落の昨季の5冠右腕を前に、2番打者の三ツ俣が決断したのはフォークを捨ててのストレート狙い。初球のフォークに手を出さない。

 2球目のストレートは打ちにいったが、空振りした。3球目のストレートは外角に外れ、4球目のフォークの誘いにも乗らなかった。

 5球目のストレートは148キロ。山本はストライクを取りにきたが、三ツ俣のバットは、そのボールにほんの少しかすっただけで伏見のミットに吸い込まれた。だが、フルカウントになってから、ドラファンの記憶に刻まれる“魂の勝負“が始まった。

 山本は伏見のサインに3度クビを振った。

 選んだのは154キロのストレートである。ここまでの三ツ俣の反応を見れば、ストレート狙いは明らかだが、タイミングは合っていない。おそらく伏見はフォークで裏をかこうとしたのだろうが、山本は、ギアを入れストレートの威力を増せば、空振りを取れると判断したのだろう。

 しかし、バットを短く持ち、コンパクトにスイングした三ツ俣はファウルにした。

 7球目に山本はカーブを投じた。三ツ俣はタイミングを外されたが、なんとかバットの先っぽに当ててファウル。8球目は153キロのストレート。伏見が構えたのは、外角だったが、逆球となって内側にきたボールを三ツ俣はまたしてもファウルにして粘った。

 そして運命の9球目。もうボール球は投げられない山本は、伏見のサインにうなずきカーブを投じた。三ツ俣の粘りに根負けしたのかもしれない。ストレートに立ち遅れていた三ツ俣には、その選択が幸いした。

 体が開き後ろに倒れるほど体勢を崩しながらも食らいつき引っ張った。打球は三遊間へ。

「打った瞬間、抜けてくれと思って走った」

 飛び込んだショート野口のグラブは届かない。極端な前進守備を敷いていたレフトの中川圭は、そのわずか数歩後ろで打球を捕球してバックホームしたが、フルカウントから最高のスタートを切っていた代走の高松は余裕のヘッドスライディングで決勝のホームを滑り抜けた。三ツ俣は、一塁ベース上で三塁ベンチにむかって右手を突き出した。

 

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