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西武が20日のドラフトで早大の現役最多12本塁打を誇るスラッガー蛭間拓哉外野手を1位指名することを公表した(写真・日刊スポーツ/アフロ)
西武が20日のドラフトで早大の現役最多12本塁打を誇るスラッガー蛭間拓哉外野手を1位指名することを公表した(写真・日刊スポーツ/アフロ)

なぜ西武は早大スラッガー蛭間拓哉外野手のドラフト1位指名を公表したのか…ソフト、日ハムなど相次ぐ公表戦略の功罪とは?

 験担ぎうんぬんもあるが、何よりも球団をあげての誠意と熱意を、事前公表を介して蛭間サイドに伝える意義の方が大きかったはずだ。さらに1位指名で競合した末に抽選で外れくじを引くリスクを嫌う他球団が、蛭間を1位候補から外すケースも考えられる。
 もっとも、これはデメリットと表裏一体を成す。
 現時点で1位指名する選手を決めかねている他球団を、たとえば「ならば、われわれも蛭間で」といった形で事前公表が後押しするケースも出てくるだろう。実際、昨年のドラフト会議で隅田の1位指名を事前公表していたのは西武だけだった。
 今年のドラフト会議でも西武に先駆けて、ソフトバンクがイツアの1位指名を10日に公表。日本ハムも西武と同じ11日に、打者との「二刀流」で注目を集めている矢澤宏太投手(22、日体大)の1位指名を公表した。
 名前こそ明かさなかったものの、巨人も9月下旬の段階で「体は小さいけれども、三拍子がそろっている」と1位指名選手に言及。校通算68本塁打を放った浅野翔吾外野手(17、香川・高松商)の指名を実質的に公表している。
 対照的に中日の立浪和義監督(53)が事前に公表しないと明言するなど、絶対的な1位候補が少ないと言われる今年のドラフト会議を直前に控えて、各チームの駆け引きも始まっている。
 オンライン取材では「競合した場合は新監督が抽選するのでしょうか」と、新監督就任が確実視される松井稼頭央・一軍ヘッドコーチ(46)が念頭に置かれた質問も飛んだ。渡辺GMは「まだわからないし、これから決めます」と苦笑した上で、こんな言葉を残している。
「普通にいったら、あの人じゃないですかね」
 あの人とはもちろん、強運を持つ飯田球団本部長をさす。さまざまな思いが飛び交うなかで、自身と同じ群馬県出身で、小学校6年時には西武ライオンズジュニアに選出された経験も持つなど、すでに不思議な縁で結ばれている蛭間を迎え入れる光景を渡辺GMは思い描いている。
(文責・藤江直人/スポーツライター)

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