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神宮球場で開催された日本シリーズ第2戦は3点差でオリックスに負けていたヤクルトが9回に内山の同点3ランで追いつき執念ドロー
神宮球場で開催された日本シリーズ第2戦は3点差でオリックスに負けていたヤクルトが9回に内山の同点3ランで追いつき執念ドロー

なぜヤクルトは劇的ドローを演出できたのか…オリックスの誤算とルールに救われた幻の勝ち越し点

 オリックスの中嶋監督の打つ手は、何もかもがうまくはまっていた。第2戦の先発には、山本に次ぐ勝ち星を挙げている宮城ではなく、左腕の山崎福を立てた。山崎は、緩急をうまく使ったピッチングで、ヤクルト打線を翻弄した。抜擢理由は不明だが「投手によって好き嫌いが顕著」と言われる神宮のマウンドを明大時代に“庭”としていた山崎福の相性を買ったのかもしれない。中嶋監督は無失点の山崎福に深追いをさせず4回でスイッチ。5回から2イニングを山崎颯、7回を宇田川、8回をワゲスパックとつなぎ、9回に阿部。2022年型の勝利方程式に入っていた。
 打線もトップバッターを前日ノーヒットに終わった福田から安達に変え、その安達がキーマンとなった。2点を先制した3回にはライト前ヒットで宗につなぎ、5回には先頭打者として二塁打で出塁して、杉本のタイムリー内野安打で3点目のホームを踏んだ。
 だが、阿部の失投だけが誤算だった。8回を任せたワゲスパックが二死からオスナ、中村に連打を浴びて満塁にしてしまったことも、歯車が狂う始まりだったのかもしれない。
 そして内山の一撃で、まるで時計の針が逆回転したかのように、すべての流れが、ヤクルトに向き始めたのである。

 
 延長12回には、オリックスの勝ち越し点がルールに救われて取り消しになるというラッキーな追い風がヤクルトに吹く。二死二塁から8番手の木澤が紅林へ投じた5球目のスプリットがワンバウンドとなり、これを中村が体に当てて大きく後方へ弾いた。一塁ベンチ前までボールが転がったのを見て、二塁走者の佐野は一気に勝ち越しのホームを駆け抜けた。だが、そのボールは、偶然にもベンチの中に入っていたため、球審が佐野のホームインを認めず、三塁へ戻したのである。
 公認野球規則の「5.06走者」の項目の中にある「進塁」には、「次の場合、各走者(打者走者を含む)はアウトにされるおそれなく進塁することができる」との記述があり、(H)1個の塁が与えられる場合──打者に対する投手の投球、または投手板上から走者をアウトにしようと試みた送球が、スタンドまたはベンチに入った場合、競技場のフェンスまたはバックストップを超えるか、抜けた場合。と定められている。つまり投手の投球がベンチやスタンドに入った場合は、テイクワンベースで二塁走者は三塁までの進塁しか認められないのだ。これが野手の送球となると違っていて「2個の塁が与えられる」。中嶋監督はルールの確認のためにベンチを出て、球審と話をしていたが、送球の場合は認められるテイクツーベースと投球の場合のテイクワンベースが混乱してしまっていたのだろう。

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