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11ラウンドに井上尚弥は守りに徹したバトラーをついに仕留めてKOで日本初の4団体統一を成し遂げた(写真・山口裕朗)
11ラウンドに井上尚弥は守りに徹したバトラーをついに仕留めてKOで日本初の4団体統一を成し遂げた(写真・山口裕朗)

なぜ井上尚弥は判定濃厚の展開から11ラウンドKOで歴史的4団体統一に成功したのか…「オレを倒しに来たのじゃないのか?」

 プロボクシングのバンタム級世界4団体統一戦が13日、東京江東区の有明アリーナで行われ、WBAスーパー、WBC、IBFの3団体統一王者の井上尚弥(29、大橋)が、WBO王者ポール・バトラー(34、英国)を11ラウンド1分9秒にKOで下して日本人初の4団体統一王者に就いた。世界では9人目の偉業で、4つのベルトすべてをKOで獲得したのは世界初の快挙。だが、ここは通過点。井上はスーパーバンタム級への転級を宣言した。2階級での4団体統一王者という前人未到の偉業へ挑む。

 繰り出した665発のパンチ

 

 モンスターは自らを鼓舞した。
「KOで勝つ準備をしてきたのに判定ではやりきれない」
 11ラウンドが始まるコーナーで、井上は、両手を交互に天井に突き上げ、両足でキャンバスをドカドカと踏みKOを予告した。
 防御一辺倒のバトラーのスタイルに大橋会長は「倒すのは難しい。もう判定勝利かな」と覚悟していたが、そのアクションを見て「まさか行く気なのか」と目を丸くした。
「ギアを入れた」
 井上がバトラーに襲いかかる。
 左右のフックでロープに詰めると、殺意をこめた左ボディをエルボーブロックのスキを突いて叩き込んだ。ここまで耐えに耐えてきたバトラーがついに腰を落とした。そこからフックの嵐。バトラーはうつ伏せに倒れた。両手を突き、立ち上がろうとしたが、体が動かない。レフェリーが10カウントを数えると、英国人は腹を抱えて大の字になった。
 平日の夜に1万5000人のファンで埋まった有明アリーナが大歓声に包まれる。井上はリング上でジャンプして父の真吾トレーナーと抱き合った。
「4団体統一、やりました!4年。団体の垣根などがあり遠回りしましたが、今日12月13日、最高の日になりました」
 リング上でマイクを持った王者は吠えた。
 2018年5月にジェイミー・マクドネル(英国)からWBAのベルトを獲得して以来、4年7か月の歳月を経て、日本初どころかアジア初。世界でも9人目となる4つのベルトをまとめることを成し遂げた。4つのベルトすべてをKOで獲得したのは世界初だ。
「久々の11ラウンドを戦って疲れましたね。攻めて、攻めて、攻めたんで、いつもより疲れた。ここにベルト4本が並んで気持ちいいです」
 Compuboxの非公式のパンチ統計によると井上が繰り出したパンチが665発で151発のパンチが的中。一方のバトラーは半分以下の301発で的中パンチは38発。1ラウンドはパンチが当たらなかった。
 4本のベルトを前に井上が安堵した表情を見せると、大橋会長は感激のあまり「ブラボーでしたね」と、思わず流行語が口を突き、「判定勝ちとKO勝ちでは200%違う。大きい試合で価値ある試合をした。すごい1日でした」と、愛弟子を称えた。

 

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