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11ラウンドに井上尚弥は守りに徹したバトラーをついに仕留めてKOで日本初の4団体統一を成し遂げた(写真・山口裕朗)
11ラウンドに井上尚弥は守りに徹したバトラーをついに仕留めてKOで日本初の4団体統一を成し遂げた(写真・山口裕朗)

なぜ井上尚弥は判定濃厚の展開から11ラウンドKOで歴史的4団体統一に成功したのか…「オレを倒しに来たのじゃないのか?」

 敵はバトラーではなかった。忘れていた勝負師の凄みを取り戻した井上を大橋会長は「1.5倍」強くなったと言い、井上は「メンタルが強くなった」と言った。この充実した時間がなければ、11ラウンドのKO劇が生まれていなかったかもしれない。
――新しい景色が見えたか?
 井上にそう聞くと、一瞬、考えて、こう返した。
「ここがゴールじゃない。会場に足を運んでくれたお客さんが最高の景色を見せてくれたが、まだまだ通過点と考えている。満足感は…満足はしているが、次へ向けて切り替えていきたいという思いがある」
 リング上では「次はスーパーバンタム級を考えています」と転級を宣言した。
「スーパーバンタムには強敵がひしめいている。今2人が2団体統一という立場にいてなかなか挑戦できる機会もどうかなと思うが、そこのトップ戦線に入っていきたい」
 スーパーバンタム級には、現在、WBAスーパー、IBF同級王者のムロジョン・アフマダリエフ(28、ウズベキスタン)、WBC、WBO同級王者のスティーブン・フルトン(28、米国)という2人の統一王者がいる。
 減量の厳しいフルトンには、フェザー級転向の話が具体化していて、元WBA、WBC世界スーパーバンタム級王者のブランドン・フィゲロア(25、米国)とのWBC世界フェザー級暫定王座決定戦での再戦が承認されている。前戦で左拳を痛めたアフマダリエフもIBFから。岩佐亮佑(セレス小林)らと戦い、日本では馴染みの深いマーロン・タパレス(30、フィリピン)との指名試合を指令されており、井上の読み通りにスーパーバンタム級の世界挑戦は簡単には進まない。井上自身も「体格も含めた階級の壁が立ちはだかる」と覚悟しており、ボロ負けのバトラーからも「彼はパンチ力があるが故にディフェンスは後付け。バンタム級では通用していたがディフェンスに関してはまだ無知だ。スーパーバンタム級では厳しくなっていく。ディフェンスの必要性を考えた方がいい」と忠告された。
 だが、バンタム級で敵がいなくなった井上にとってみれば、壁が高いほど、モチベーションが喚起され強くなれる。2023年。世界でも前人未到の記録となる2階級4団体統一への挑戦がスタートする。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ)

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