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大阪女子マラソンで日本人トップとなる3位でゴールした安藤友香だが自己ベストの更新ならず笑顔はなかった(写真:森田直樹/アフロスポーツ)
大阪女子マラソンで日本人トップとなる3位でゴールした安藤友香だが自己ベストの更新ならず笑顔はなかった(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

なぜ大阪女子マラ日本人トップで3位の安藤友香に笑顔がなかったのか…届かぬ“世界との距離”に瀬古利彦リーダーも落胆「(勝負に)いく力がなかったのか」

 レースは気温7.5度、湿度52%、風速2.4mの絶好コンディションで始まった。最初の10キロを32分56秒で通過。日本記録とは3秒差という高速ペースでスタートを切った。最初の給水所では、マイボトルを取り損ねたが、ペースメーカーを風よけに使いながら好リズムを刻んでいく。手を下げ大きく振らない独特の”忍者走り”は安定度を増していた。
 7キロで先頭集団にアクシデントが発生した。
 同じくMGCの権利を持ち、今大会で自己ベスト更新を狙っていた優勝候補の佐藤が真後ろにいた岩出玲亜(28、デンソー)と接触して転倒。その後、立ち上がって追走したが、両ひざから血が流れ出しており、19キロ手前で野口英盛監督に肩を抱きかかえられて途中棄権した。沿道にうずくまり、涙を流した。
 佐藤は、そのままホテルへ帰り、病院へ直行。レース後、主催者を通じて「転倒してからもまだ頑張って走ろうとしましたが、ひざの皮がかなり深くめくれていて、出血もあり、痛みに耐えられなくなっていきました。いい準備ができていて調子も良く、余裕があっただけに、非常に悔しいので、また次に向けて準備したいです」とコメントを残した。
しかし、安藤は、先頭集団に食らいつき、中間点もトップの1時間09分45秒で通過した。野口さんが持つ2時間19分12秒の日本記録のペースにわずか26秒差のハイベース。
「すごく乗れている、いい感じで走れていた」
 勝負所となるであろう30キロでの作戦を思い浮かべる余裕もあったとのこと。しかし、その思いとは裏腹に“30キロの壁“が安藤の前に立ちふさがった。
 玉造筋の30キロ地点でペースメーカーが外れると、昨年のロッテルダム覇者のデッセと昨年2時間20分台を2度出したメセレット・ゴラ・シセイ(25)のエチオピア勢の2人がギアを入れて前へ出る。いきなり安藤はちぎられた。
「ペースアップしたときについていけなかった。思い切る勇気、捨て身の覚悟が必要だったかも知れませんが、体がきつかった」
 30キロから35キロまでの5キロをデッセが16分27秒で安藤が16分53秒。安藤はいつもよりも大きく手を振り、自身を奮い立たせようとしたが、口は開き、険しい表情に変わった。限界だったのだろう。
 8回目のマラソンでも悲願の優勝を手にできず、世界との差をまざまざと見せつけられる形となった安藤は、「一気にペースが上がったのは1キロくらい。そこからはそうでもなかった。苦しい中で、1キロの我慢。その乗り越え方が今後の課題だと思う」との反省を口にした。
 今回1、2位を独占したエチオピア勢のデッセとシセイは世界最強長距離陸上集団「NNランニングチーム」の一員ながら2時間15分の壁を破ってくるトップクラスではなく7、8番手クラス。世界の超一流ではないランナーに歯が立たなかったのだ。
 日本選手は、上杉真穂(27、スターツ)が終盤に盛り返して2時間25分18秒で4位。32歳の吉川侑美(ユニクロ)が初マラソンで5位、ママさんランナーとなった2015年の北京世界選手権代表の前田彩里(31、ダイハツ)が6位。さらに池田千晴(29、日立)が7位、ネクストヒロイン枠で出場した大東優奈(25、天満屋)が8位で続き、この4人がMGCの出場権を獲得したが、とりわけ目を引くニュースターも出現しなかった。
 会見場に姿を見せた日本陸連の強化委員会マラソン強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦さんも落胆の色はありありだった。

 

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