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優勝の瞬間、大谷と中村が抱き合い、歓喜の輪が広がった(写真:UPI/アフロ)
優勝の瞬間、大谷と中村が抱き合い、歓喜の輪が広がった(写真:UPI/アフロ)

「甘めでどっしり」“世界一捕手”中村悠平が明かした9回のマウンド上会話から読み解く大谷翔平「魂の15球」の真実

「横への変化が25cm以上で落差が10センチ未満」のボールをデータ解析ツールのスタッドキャストは「スイーパー」として判別すると言われている。昨年の大谷の全球種の約37パーセントを占めた。そのスイーパーの効果率は、昨年全米で使い手として知られるディラン・シーズ(ホワイトソックス)に次いで2位の数値を示した。まさに得意中の得意のウイニングショットでトラウトを仕留めたのである。
「最高の形で(トラウトを)迎えることができて、最高の結果(三振)になったのでよかったかなと思います」
 大谷が夢対決をこう振り返ると、トラウトも「私が望んだような形は起きなかったが、野球ファンとしては、みんなが見たかったものだと思う。1ラウンド目は彼が勝ったよ」と完敗を認めた。
 フルカウントから中村の要求したボールも大谷が投げたかったボールも一致した。魂の15球で大谷がクビを振ったのは1回だけ。
 巨人OBでヤクルト、西武で監督を務めた広岡達朗氏は、大会MVPに中村を推し、そのデータ分析力と、打者のスイングや様子を細かく観察して、狙いを読むリードを絶賛していたが「甘めにどっしり構えて下さい」の大谷の言葉に、彼の意図をくみ取ったのだろう。
 結果的に、先発の今永昇太(横浜DeNA)から戸郷翔征(巨人)、高橋宏斗(中日)、伊藤大海(日ハム)、大勢(巨人)、ダルビッシュ有(パドレス)、大谷と、注ぎこまれた7人の投手をリードし、スター軍団の米国打線をソロホーマー2本だけに抑えこんだ中村は「7人の投手をリードしましたけどそれぞれ素晴らしい投手ですし、彼らのストロングポイントを引き出してあげれば必ず抑えられると思っていたので、僕はその一心で受けていました」とも語った。
 大谷の魂の15球を含め、投手の特色を把握した上で、その持てる能力を存分に引き出した中村のリードも、また侍ジャパンを世界一へ導いた理由のひとつなのかもしれない。
「今までの野球人生の中で本当に感じたことのない感情であったり、プレッシャーもありましたが、その中でプレーすることができて、そしてこのチームで世界を知ることができて本当に幸せに思ってます」
 大谷の魂の15球の裏演出者の1人は、大きな財産を持ってヤクルトのリーグ3連覇に挑むことになる
(文責・RONSPO編集部)

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