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優勝の瞬間、大谷と中村が抱き合い、歓喜の輪が広がった(写真:UPI/アフロ)
優勝の瞬間、大谷と中村が抱き合い、歓喜の輪が広がった(写真:UPI/アフロ)

「甘めでどっしり」“世界一捕手”中村悠平が明かした9回のマウンド上会話から読み解く大谷翔平「魂の15球」の真実

 WBCで優勝した侍ジャパンの国内組メンバーが23日、チャーター機で米国から帰国、優勝報告会見が行われた。米国との決勝戦でマスクをかぶったのがヤクルトの中村悠平(32)。「3番DH」でスタメン出場しながらも9回に7年ぶりにクローザー登板して胴上げ投手となったエンゼルスの大谷翔平(28)と直前に交わした会話の中身について明かした。そこから見えてきたのが、魂の15球の真実だった。

 「甘めでいいんで、どっしり構えてください」

 

 永遠の記憶に残るシーンなのかもしれない。
 3-2の1点リードで迎えた9回。レフトフェンスの向こう側にあるブルペンから大谷がゆっくりとマウンドに向かって歩き始めた。ちょうど源田壮亮(西武)が放った内野ゴロのリプレー検証の最中で走らずに済んだのも「3番DH」でフル出場していた大谷にとっては助かったのかもしれない。
 ユニホームの左胸からズボンのスネあたりまでが泥だらけだった。7回に内野安打で出塁した大谷は、牽制に手から滑って帰塁した際にユニホームが汚した。救援準備のため5回からブルペンとベンチを何度か走って往復した大谷は、土の汚れを落とす時間もなかった。
「泥だらけのストッパー」の言葉がSNSでトレンドワード入りした。
 マウンド上に中村が駆け寄り、互いにグラブとミットで口元を隠して打ち合わせをした。
 大歓声のせいだろう。大谷は、かなり大声で話しているようだった。
いったいどんな会話をしていたのだろう。
 帰国会見で、その会話について質問された中村は驚きの返答をした。
「ブルペンでも1度も受けたことがなかったので。ベンチで甲斐選手とちょっと話した後に、マウンド上でサインの打ち合わせをしっかりした」
 1次ラウンドの中国戦、準々決勝のイタリア戦と2試合先発をした大谷とバッテリーを組んだのは甲斐拓也(ソフトバンク)だった。キャッチングに定評のある甲斐でさえ、キャッチングがぶれ、弾くこともあった大谷の160キロを超えてくるストレート、2種類のスライダ―、そして落差の激しいスプリットを、中村は試合間の投球練習でさえ受けたことがなかったというのである。甲斐にベンチで注意点などを伝授された中村に、大谷は、こう続けたという。
「甘めでいいんで、どっしり構えてください」
 中村は「(そう)言ってくれたんで、それを聞いて僕は座ってました」という。詳しく説明すると、投げて欲しいコースのギリギリにミットを構えるのではなく、ストライクゾーン寄り(甘め)にミットを構え、また体をコースに目いっぱいに寄せて、丸めて小さく構えるのではなく、的を大きく(どっしり)構えて欲しいとの要求である。
 映像を見直すと、確かに中村は、多少コースに体は寄せるが、コース一杯にミットを構えることはしていなかった。
 この大谷の言葉が意味することは何だったのか。

 

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