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カウント途中に代打に出た原口が価値ある2ラン(資料写真・黒田史夫)
カウント途中に代打に出た原口が価値ある2ラン(資料写真・黒田史夫)

なぜ阪神の岡田監督”神采配”は成功したのか…綿密裏舞台…カウント途中の異例代打の原口文仁が采配に応えてダメ押し2ラン

 そこまでして原口のひと振りにかけたのには理由があった。
「あのストレートを打てるのは原口しかいないやんか」
 岡田監督は、昨秋の監督就任以来、一級品の投手のストレートに強くなることをテーマに掲げていた。評論家時代から、阪神の得点力不足が解消できない根本的理由がそこにあると感じていたからだ。
 原口が言う。
「キャンプからストレートを打ち返すことを、チームとしても、個人としても目標にしていた。その練習の成果が出た1打席だと思う」
 その努力を岡田監督は見ていた。
 だからこそエスコーバーの150キロを軽く超えてくる剛球を打てるとの確信があったのである。
「まあ予定通りだったかなと」と指揮官は言った。

 何が何でも1点を取りにいかねばならないチーム事情もあった。
 延長12回にもつれた前日には7人の中継ぎ陣を投入。岩崎には3連投させたが、連投した浜地はベンチから外し、同じく連投の守護神の湯浅も、試合前のキャッチボールさえさせずに温存することを決めていた。
「最後に湯浅が投げるんだったら、別に2点でもよかったんかもしれんけど、石井は(クローザーが)初めてのポジション。だから点を欲しかった」
 代役守護神の石井の心理的な負担を少しでも楽にさせたいと1点を取りにいき、結果、最高の2ランという形で4点差がついたのである。
 前日のゲームで好投した石井は、二死から戸柱にヒットを許すが、関根をショートフライに打ち取ってゲームセット。4点差でセーブはつかなかったが、セーブに価する1イニングだった。
 岡田監督は、「JFK」を確立させた前監督時代とは違い、時代の潮流を読み、休養を与えながら起用する考えではあるが、3連投禁止を絶対ルールとして定めているわけではない。
「力のあるピッチャーを投げさせないのはおかしいと思う。エスコバーみたいに負けているゲームまでは投げさせへんと思う。負けが込んでくると、勝ってる時も投げる、負けてる時も投げるとなるから、そういうことはしたくない。でも、チームが勝つと思ったら、やっぱり意気に感じて勝ちパターンのピッチャーは投げるよ。はっきり言うて」
 ペナントの流れとも関係してくる。
 岡田監督は、8回には、開幕戦では、制球が定まらずにヘロヘロで前日の激闘では使わなかったKケラーを「うっぷんを晴らせ」と投入した。原口と同様にミスや失敗した選手にリベンジのチャンスをすぐに与える。選手心理を大事にする采配だ。ケラーは2日前とは別人のように3番から始まる打順を三者凡退で片づけた。

 

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