• HOME
  • 記事
  • 野球
  • なぜ阪神の岡田監督”神采配”は成功したのか…綿密裏舞台…カウント途中の異例代打の原口文仁が采配に応えてダメ押し2ラン
カウント途中に代打に出た原口が価値ある2ラン(資料写真・黒田史夫)
カウント途中に代打に出た原口が価値ある2ラン(資料写真・黒田史夫)

なぜ阪神の岡田監督”神采配”は成功したのか…綿密裏舞台…カウント途中の異例代打の原口文仁が采配に応えてダメ押し2ラン

 阪神が2日、横浜DeNAを6-2で下し2年ぶりの開幕3連勝を果たした。先発の才木浩人(24)が6回3分の1を4安打8奪三振1失点の好投を見せたが、DeNAベンチと京セラドーム大阪の虎ファンの度肝を抜いたのが、2点差に迫られた8回の岡田彰布監督(65)の神がかった采配だ。二死から中野拓夢(26)に盗塁させると、途中出場の島田海吏(27)の打席途中で、原口文仁(31)を代打に送り、エドウィン・エスコバー(30)の初球を捉えて勝負を決める2ランが飛び出た。最後は3連投となる守護神の湯浅京己(23)を温存して石井大智(25)を投入して逃げ切った。“神采配”の舞台裏に迫った。

 島田は中野の盗塁を成功させるためのダミー

 

「え?」
 京セラドームがザワザワした。
 島田の打席がまだ完了していないのに岡田監督がベンチを出てきたのである。2点差に詰め寄られた8回。二死から四球で出塁した中野がノイジーの守備固めで、途中出場していた島田の打席の2球目に“速すぎる”スタートを切った。エスコバーは、あわてて一塁へボールを送るが、中野は躊躇することなく二塁へ。二塁カバーも遅れて、ソトからの転送も間に合わず、結果的に盗塁を成功させた。するとカウント0-1という島田の打席途中で岡田監督が代打原口を告げたのである。
 エスコバーからしてみれば、この打席で2球目、原口には初球となるインコースへの154キロのストレートだった。
 スイング一閃。快音を残した打球は、レフトスタンドの3階席まで飛んでいった。岡田監督は「打った瞬間にいった」と思い、原口は「いい感覚はあったんで、どうかなと思いながら走ってました」という。
 神がかった岡田采配と、それに応えた原口の一打に酔いしれたファンは、もう総立ち。三塁ベンチでは、三浦監督が呆然としていた。4点差に広がり、勝負あり、である。
 “神采配“のプロセスを岡田監督がこう解説した。
「昨日のお返しを原口もせなあかんし(中野が盗塁に成功して)セカンドにいったら原口は準備させていた」
 中野に盗塁のサインを出した時点で、打撃コーチに「昨日の件があるから(原口で)行くで」と伝え、原口に打席途中の代打を用意させていたという。「昨日の件」とは、5-5で迎えた8回一死二、三塁で、代打起用された原口が、同じくエスコバーと対戦して、三塁ファウルフライに終わっていた悔しい打席のことだ。
 岡田監督は「あれも紙一重よ。そう言う意味ではいいお返しができる場面やったしな」とリベンジチャンスを与えた。
 原口にもカウント途中の代打に心の準備があった。
「しっかりと準備した。同じピッチャーで、昨日も球筋を見ている。イメージをわかせながら打席に入った」
 岡田監督と直接会話を交わしたわけではなかったが、この代打起用に「やりかえせ」のメッセージがあることを理解していたという。
 カウント途中の代打には、さらに奥深い意図があった。
 島田を、最初、そのまま打席に立たせたのは、「走者一塁では、原口をいかせたくなかった」との理由と「(左打者の島田だと)キャッチャーも(二塁へ)投げづらい。ランナーを気にせす、このバッターなら抑えられるというピッチャー心理にもなる」との狙いがあった。
 前日は、同じくエスコバーの大きいモーションを盗んで植田が盗塁を決めていた。エスコバーは警戒を解かなかったが、中野の好スタートに後手を踏んだ。島田は、その盗塁を誘発するためのダミーだったのである。
 盗塁に関しては、今季からは「行けたら行け」のグリーンライトではなく「行け」のディスボールのサインに切り替わっている。ベンチが責任を負うサインだ。岡田監督は初球から盗塁のサインを出していた。
「できれば初球にいけたらよかったんやけど」
 結果、カウント0-1からの代打となったが、もし中野の盗塁が2ストライクに追い込まれてから成功していても、原口のカードを切るつもりだったという。
「ツーストライクでも代えていた。いいやんか。人(島田)の三振になるんやから」
 野球に携わる記者としては恥ずかしい話だが、一瞬、その意味を理解できなかった。野球規則をめくると2ストライクからの代打で三振した場合に限り前打者の記録となる。それ以外は代打の打者の責任。ちなみに1打席で3人の打者が交代した場合には「3人目の打者が三振に終わったときには、2ストライクが宣告されたときに打撃についていた打者に、三振と打数を記録する」とルールブックに記されている。

 

関連記事一覧