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井上尚弥とフルトンは3制止も振り払って0秒睨み合った(写真・山口裕朗)
井上尚弥とフルトンは3制止も振り払って0秒睨み合った(写真・山口裕朗)

「ああやっちゃった!」井上尚弥の“地雷”を踏んだフルトン…怒りを爆発力と冷静な判断力に変える“モンスター”が新たな歴史を

 また井上が日本製のウイニング、フルトンが米国製のグラントのグローブを使うが、グローブチェックをした際、フルトン陣営は、井上のグローブの重さを計測することを要求してきた。問題なく8オンスだったが、バンテージ問題といい、井上の破壊力満点のパンチ力に対してかなり神経質になっている。
 井上陣営も紳士的に一撃は反撃した。
 ホールディングの反則スレスレのクリンチを駆使してくるため厳格にチェックしてもらうようにリクエスト。「フレンドリーに要求があった。ちゃんと見るから大丈夫との話があった」(安河内氏)という。レフェリーのエクトル・アフー氏(パナマ)は、過去に4度日本のリングでさばいた経験があり、2009年には試合が荒れることが想定された亀田興毅と内藤大助のWBC世界フライ級タイトルマッチのレフェリーも務めた。フルトンびいきではない公平なレフェリングが期待できるだろう。
 では試合はどうなるのか。
 元WBA世界スーパーフライ級王者の飯田覚士氏は、こう展開を予想する。
「過去の試合では井上選手とフルトンのスタイルは正反対。井上選手は1ラウンドからKOチャンスをうかがい集中力を高めて倒しにくるが、フルトンは12ラウンドを見据えてポイントアウトに重点を置き、全力を出さない。バックステップが速く、頭の位置を常に動かし、カウンターではなく打ち終わりにコンビネーションを合わせてジャッジの印象を得るパターン。またフィジカルを生かしたクリンチが得意で腕を引っ張りこむような力が強い。中間距離の攻防を避けて押し込むことを攻勢点に変えようと考えるだろう。だが、井上選手が相手では、これまでのようなメリハリを作れずより集中しなければならなくなると思う。すると中盤にはスタミナを消耗してミスが生まれる可能性が出てくる」
 飯田氏は「8ラウンドまでに井上選手がKO勝利する」との結論。
「バックステップよりもステップインの方が時間がかかり遠い。それを井上選手が、どう克服するか。私は誘ってからパンチを見切りステップインすると想定している。得意の左の上下を警戒するフルトンに対して逆の右の上下を有効に使うのかもしれない。いずれにしろフルトンは、これまでのような戦いを長丁場続けることはできないだろうし、井上選手はミスを見逃さない。たとえポイント勝負になっても井上の迫力のあるパンチが採点では優先されると思う」
 海外ブックメーカー「ウィリアムヒル」のオッズは井上勝利が1.22倍で、フルトン勝利が4.3倍。フルトンのノックアウト負けは1.7倍で、井上のノックアウト負けが8倍。井上の圧倒有利の予想となっている。
 決戦を前に井上が最後に言った。
「(試合前日の感覚が)全然違う。たかが1.8キロですが、その1.8キロがどれだけでかいか。明日の自分の動きでわかると思う。1.8キロの壁がどんなものかも明日、証明される。フィジカル的、耐久力的なものがバンタム級で通用していたものが通用するか、通用しなくなるか。未知な部分があるので、それを明日、証明したい」
 2階級2団体統一王者となれば日本ボクシング界史上初の快挙。
 今日“モンスター”が有明アリーナで歴史を変える。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

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