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井上尚弥とフルトンは3制止も振り払って0秒睨み合った(写真・山口裕朗)
井上尚弥とフルトンは3制止も振り払って0秒睨み合った(写真・山口裕朗)

「ああやっちゃった!」井上尚弥の“地雷”を踏んだフルトン…怒りを爆発力と冷静な判断力に変える“モンスター”が新たな歴史を

 井上はすでに冷静さを取り戻していた。
 怒りはモチベ―ションに変えるが、リングには持ち込まない。
 判定勝利を狙うフルトンは、ロングレンジとクリンチを多用した密着戦を使い分けて井上を空回りさせようとしてくる。まさに頭脳戦になることが予想されるだけに井上は冷静だった。
 だから井上を怒らせると怖い。
 計量で披露したその肉体の完成度も凄かった。
 確かに上背は違い、フルトンは肩回りの筋肉の付き方は凄かったが、ポイントアウトのボクシングをスタイルにするように足は細く、一方の井上は、足の太さから背中の筋肉に盛り上がりまでバランスが取れていた。
「120%仕上げてきた。ひとつ階級を上げてたるんだ体じゃなく、しっかりと筋肉を作りあげて、スーパーバンタム級の体を作ってきた。ここからリカバリーして、また明日違った体を見せられる」

 22日の公式会見ではバンテージの巻き方に難癖をつけられた。肌に直接テーピングを巻く手法をフルトン陣営のチーフトレーナーであるワヒード・ラヒーム氏が問題視した一件だ。
 井上自身は、この日も「ローカルルールがわかっていないんでしょうね。フルトン自身は思っていないかもしれないけれど、びびってんでしょう」と、納得がいっていなかったが、ルールミーティングでは、井上陣営が“大人の対応”を見せた。案の定、フルトン陣営が、肌に直接テーピングを巻く手法に「海外の常識では考えられない。あれを認めるならリングに上げられない」とクレームをつけてきたが、井上陣営が先んじて「肌に直接テーピングはせず、まずガーゼを一枚巻いてから次にテーピングをする。それでいいか?」と譲歩。フルトン陣営も納得したという。
 バンテージの巻き方は、ローカルコミッションルールに従うことが、慣例となっており、JBCはルールで明文化はされていないが、肌に直接テーピングを巻く手法を認めている。全米でもネバダ州、テキサス州、ニューヨーク州では肌に直接テーピングを巻くことは許可されているが、その他の州や英国などでは禁止されており、今回は、井上陣営の譲歩でABC(北米のボクシングコミッション協会)ルールの一部が採用されることになった。
 これまでも井上は、米国ロスやグラスゴーで試合をした際には、先にガーゼを巻いてからテーピングするバンテージの手法を経験しており、担当の佐久間トレーナーも、「これまでも海外では何度かこの方法でやっているのでまったく問題はない。やり方のパターンが少し変わるだけで大差はない。固定できるし、拳を保護するバンテージを巻くことができる」と説明した。
 ガーゼを重ねて作るクッション部分を佐久間トレーナーは、時間を短縮するため事前に作ってきたが、それについても現場で作成することを求められて、当日、応じることになったという。

 

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