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日本初のトランスジェンダーボクサーの真道ゴーが準公式試合で判定で敗れるもライセンス交付に近づくパフォーマンスを披露した(写真・ボクシングモバイル)
日本初のトランスジェンダーボクサーの真道ゴーが準公式試合で判定で敗れるもライセンス交付に近づくパフォーマンスを披露した(写真・ボクシングモバイル)

敗れるも歴史を刻む…「こりゃあかん。男やん。倒されるわ」日本初のトランスジェンダーボクサー真道ゴーの実力を対戦相手とJBCはどう評価したのか?

「満足しているかと言えば悔しい。拳を交えて戦えたことは純粋に楽しかった。有意義な時間を過ごさせえもらった。ただ結果がすべて。それが今の実力」
 真道は支えてくれた人たちへの感謝の気持ちを繰り返し言葉にした。
 そして「メリットもないのに受けてくれた」対戦相手の石橋にお礼を言った。
 日本ボクシング界で例をみないトランスジェンダーボクサーの戦いは準公式試合として行われた。元WBC世界女子フライ級王者だった真道は、2017年に女子選手としては引退。その後、性別適合手術と戸籍変更をして男子プロとしてリングに上がる道を模索した。2年前からJBCにプロテスト受験を訴えてきたが、この7月にようやくJBCは、プロテスト受験を認めないという結論を出した。
 諮問委員会は「テストケースとして受験を認めることは可能」との答申を出したが「試合で受けるダメージなど安全管理の面での知見が十分でない」との理由で、その答申を却下した。ただJBCルールに「トランス男子ルール」が付け加えられ、事前の血液検査で男性ホルモンの「テストステロン」の数値などいくつかの基準をクリアすることを条件に準公式試合は認められた。
 本石会長は、「真道の気持ちを奮い立たせたかった」と、すべてを公式戦と同じように演出した。8オンスのグローブの使用と3人のジャッジをつけての判定も要求。前日計量を行い、入場曲をかけて入場シーンを盛り上げた。
 JBCも、事前にMRI、血液検査などを行い真道はすべての数値をクリア。スタンディングダウンを認め、激しいカットがあった場合は途中でヘッドギアを着用し、レフリーには、ダメージがあった場合に通常より早く試合をストップすることなど、安全面で細心の注意が払われる中でのゴングとなった。
 真道は3分3ラウンドの戦いに男子プロとしてやれる手ごたえを感じたという。
「技術やスピード、パワーとかで劣っているとは思わなかった」
 対戦相手の石橋は「3ラウンドのダウンがなければ僕が負けていたでしょう」と真道の実力を認めた。
「技術は真道さんが上。凄く上手かった。押し引き、バックステップが僕より速かったし接近戦のパワーも男と変わらない。お世辞抜きにパンチは石みたいに固かったし、これまで5戦戦った中で、一人、凄いパンチ力の選手がいたけれど、今までやってきた男子プロ以上だった」
 そして歴史的な1戦の相手を務めた意義と真道の今後の可能性に言及した。
「ジェンダーの難しい問題はわからないけれど、性転換して男性になったボクサーと実際に対戦した僕が通用すると思うんだから、絶対に真道さんは、男子プロとしてやっていけると思う」
 男子プロとしての公式戦を望む真道には何よりの力強い証言だろう。
 視察したJBCの安河内事務局長も真道の試合内容を高く評価した。
「男子プロと遜色のない非常にいいパフォーマンスを見せてくれたことは間違いない。勝ち負けはあくまでも参考。これは無理だな、ダメだなという判断にはなりにくい試合内容だった。もっと性差が出るかと思ったが、正直、あそこまでやれるとは思っていなかった。トランス男性ボクサーの評価を見直さなければならないと思わせた」
 筆者は、ただ1点、耐久性にだけクエスチョンがついたが、安河内事務局長は、「耐久性が劣ると断定まではできない。それに耐久性は技術で消せる部分。ダウンした後にも回復して打ち合いをしていた。あれは相当の練習量がある成果」と問題視していなかった。
 そして「歴史的な1ページ。試合の重さを受け止めたい」とまで言った。

 

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