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有馬記念を勝ったのは54歳の武豊が騎乗したドウデュースだった
有馬記念を勝ったのは54歳の武豊が騎乗したドウデュースだった

「もはや“神騎乗”!」なぜ54歳の武豊とドウデュースのコンビは有馬記念で劇的復活勝利を手にすることができたのか?

 2023年の総決算レースである「第68回有馬記念」(GⅠ、3歳上、芝2500m、1着賞金5億円)が24日、中山競馬賞で行われ、2番人気で武豊(54)が騎乗したドウデュース(牡4、友道)が鮮やかなマクリ差しを決めて優勝。昨年の日本ダービーに続くGⅠ3勝目を挙げた。武豊騎手は、GⅠ最多81勝とし、最年長GⅠ勝利記録も更新、有馬記念で最多タイとなる4勝目を挙げた。10月に負傷したレジェンドがドウデュースと3戦ぶりに再タッグを組んでの劇的な復活劇。そこには衰えを知らない名手の神髄が凝縮されていた。

 「僕もドウデュースも帰ってきました」

 

 心が通い合っている名コンビが暮れの大一番でドラマチックに復活を遂げた。まるで用意されたシナリオでもあるかのよう。ともに傷ついた人馬が役者の違いを見せつけ、中山競馬場につめかけた5万人を超えるファンの喝采を浴びた。
「僕もドウデュースも帰ってきました。メンバーはそろっていましたが、ドウデュースが一番強いと信じていました。ラストの脚はいいものを持っているので、それに賭けていました。やっぱり競馬はいい。メリークリスマス!」
 有馬記念では最多33度目の騎乗。過去に1990年オグリキャップでの感動のラストランをはじめ、これで最多タイの4勝目となる。特にクリスマスイブにはめっぽう強く2006年ディープインパクト、2017年キタサンブラックに続いて今回で3度目となる。
「帰ってきました」という冒頭のセリフは2013年、ケガの影響でスランプに陥っていた際にキズナで日本ダービーを制覇したときに語ったのと同じ。今回、ファンも待っていた決めゼリフでもあり、ユタカ・コールに応えるリップサービスでもあった。
 もはや“神”の域にある名手の技がさえた。
 レースは予想通りラストランとなるタイトルホルダー(牡5、栗田徹)が先行。前半1000メートルを60秒4とリズム良く逃げた。そして場内をどよめかせたのが、“死の枠”とされた8枠16番からスルスルと前に出たスターズオンアース(牝4、高柳)だ。クリストフ・ルメールが、好スタートから昨年の牝馬2冠王を2番手につける思い切りのいい先行策を取ったのである。
 だが、思った以上にペースが上がらない。すべてが武豊の想定内だった。武豊は、3枠5番から、ドウデュースを静かに出すと抜群のテクニックを発揮して序盤は折り合いに専念。後方に構えて末脚を温存した。
 1番人気に支持されたジャスティンパレス(牡4、杉山)はタイミングが合わずにスタートで出遅れて最後尾に回った。本来ならば、もうひとつ前に持ち出したかったのだろうが、武豊が、そのポジションにいて抑え込んだ。
 ドウデュースは息を殺すかのように冷静に機をうかがう。
「道中は少し元気が良すぎるところがありましたが、我慢できました。残り700メートルぐらいからこの馬の末脚を引き出すことだけを考えて。4コーナーを回るときの脚が良かったので、なんとかなるかなと思っていました」
 3コーナー過ぎからロングスパートを仕掛けて4コーナーから内へ斜めに切れ込んだ。距離のロスを最小限に抑えながら先頭集団を射程圏に捉えた。スターズオンアースとタイトルホルダーに並び駆け、並んでからは、右ムチを入れ、ドウデュースの闘志を駆り立てた。そしてゴール寸前で2頭を差し切った。
 ジャスティンパレスも懸命に追いかけたが4着に散った。
 横山武史は「ドウデュースが相手だと思ってうまくマークはできたが、コーナーリングでギアが上がっていかず、ついて行けなかった」と肩を落とした。武豊の手綱がそれ以上のドウデュースの強烈なまくりの脚を導きだしたということだろう。
 健闘したものの2着に終わったルメールは「枠は関係なかった。いいポジションが取れ、道中はマイペース。直線も頑張っていたが、最後で内へもたれた。その分の差」と敗者の弁。レース後は武豊と握手し互いの健闘を称え合った。

 

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