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出雲駅伝で3区を走った創価大のリーキ・カミナがドーピング違反で3年間の資格停止処分となった(写真:SportsPressJP/アフロ)
出雲駅伝で3区を走った創価大のリーキ・カミナがドーピング違反で3年間の資格停止処分となった(写真:SportsPressJP/アフロ)

なぜ創価大の駅伝選手であるケニア人留学生に「ドーピング違反」が起きたのか…この事件は箱根駅伝での頂点を目指す学生駅伝界を揺るがす大問題に発展するのか?

 主要大会といえども、ドーピング検査は出場者全員に行われるわけではない。予算の問題もあり、箱根駅伝の場合は「10人」。上位10位に入ったチームから1名ずつ選ばれるのが慣例化している(今年は少し違った)。
 そのためドーピングの認識も各チームで温度差があるようだ。
 前出の監督は、「他大学がどこまでの対策をしているのかちょっと分からないですけど、この程度なら大丈夫だろう、とわざと飲んでいる子がいる大学もあると聞いています。最近はネットでドーピング物質が簡単に手に入りますから。でも、違反選手がチームから出てきたときは、国際的には一発アウトです。研修会などを実施して、指導者がもう少し認識を高めないといけないと思います」と話している。
 
 かつては状態の良いときの血液を保存しておき、それを選手の体内に戻すという「血液ドーピング」を実施していた大学もあるが、それはドーピング検査が実施される前のこと。1999年に世界ドーピング防止機構(WADA)が設立されると、国内の大会でも徐々にドーピング検査が行われるようになった。
 JADAによると、日本国内におけるドーピング検査件数は2020年度の1年間に約4500件だったという。ドーピング検査には競技終了後に行われる「競技会検査」と、競技会とは関係なく行われる「競技会外検査」(いわゆる「抜き打ち検査」)がある。
 後者の場合、検査員が予告なしに訪れるため、一定レベル以上の選手は居場所情報の提出が義務づけられている。指定した60分間に対象選手に会うことができなかった場合、「検査未了」という扱いになり、これが12か月で3回発生すると、意図的に検査を逃れたと見なされて規則違反となる。
 学生ランナーといえども、世界トップクラスの選手と判断されれば、「競技会外検査」が行われる。実際、服部勇馬(現・トヨタ自動車)は大学2年時に30㎞で1時間28分52秒の好タイムをマークしたことで、4年時の東京マラソン前に抜き打ち検査を受けている。
 市販されている風邪薬には禁止物質のエフェドリンやメチルエフェドリンが入っていることがあり、日本では〝うっかりミス〟によるドーピング違反が多いという。しかし、言い訳のできない時代になっている。ドーピングの禁止事項は毎年更新されるため、指導者も知識のアップデートが必要不可欠。中高生の場合は親も基本的な知識を身につけるべきだろう。
 今回のドーピング違反を契機に、今後の学生駅伝が清く正しく、美しいレースになることを期待したい。
(文責・酒井政人/スポーツライター)

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