• HOME
  • 記事
  • 一般スポーツ
  • 箱根駅伝Vの青学大に原監督がかけた“魔法”は何だったのか?投入したアディダスの超軽量厚底シューズと“勝利のメソッド”…黄金期再到来の予感裏に“違和感”も残す
箱根駅伝復路でゴールする青学大の宇田川瞬矢を迎える原晋監督ら(写真・日刊スポーツ/アフロ)
箱根駅伝復路でゴールする青学大の宇田川瞬矢を迎える原晋監督ら(写真・日刊スポーツ/アフロ)

箱根駅伝Vの青学大に原監督がかけた“魔法”は何だったのか?投入したアディダスの超軽量厚底シューズと“勝利のメソッド”…黄金期再到来の予感裏に“違和感”も残す

 第100回箱根駅伝の復路が3日、神奈川の芦ノ湖発、大手町着の 107.5キロコースで行われ、青学大が10時間41分25秒の大会新記録で2年ぶり7度目の総合優勝を飾った。往路を制した青学大は6区からリードを一度も譲らずに圧勝した。なせ青学大は勝てたのか。そして2015年から4連覇を果たした青学大の“黄金期再到来”の予感の裏に残る“違和感”とは?

 「準優勝でいいよ」の問いかけ

 往路を大会新で突っ走った青学大は復路もひたすら強かった。6区野村昭夢(3年)が区間2位で飛び出すと、7区山内健登(4年)も区間3位と好走する。往路で駒大から奪ったリードは2分38秒から4分44秒に拡大。アクシデントさえなければ優勝は間違いない状況になった。
 それでも青学大のアタックは止まらない。16㎞付近に遊行寺の上り坂が待ち構える8区は塩出翔太(2年)が区間新ペースで突き進み、区間歴代3位の1時間04分00秒で区間賞に輝いた。さらに9区倉本玄太(4年)が区間賞、10区宇田川瞬矢(2年)も区間2位と快走。大会新記録となる10時間41分25秒でフィニッシュして、2位の駒大に6分35秒もの大差をつけて独走Vを完結させた。

 出雲4位、全日本2位からの箱根Vは4年前と同じストーリーだった。全日本で3分34差をつけられた駒大を〝大逆転〟したわけだが、原晋監督は選手たちにどんな〝魔法〟をかけたのか。
 チームは昨年11月下旬から12月上旬にかけて、インフルエンザに集団感染。「箱根駅伝で優勝なんてできない」というほどチーム状況は落ち込んでいた。それでも原監督が蓄積してきた〝青山メソッド〟が選手たちを変えていく。
「20年間で作り上げた箱根駅伝で勝つためのメソッドを体系化しました。その基本軸があるからアクシデントがあっても柔軟に対応できるんです。個々の能力によって、トレーニングの負荷をアレンジしてきました。後続を2分以上引き離すことができれば、先頭者利得も大いに発揮される。その結果として大会新での優勝がつながったと思っています」

 原監督は早稲田大大学院スポーツ科学研究科の修士論文で、箱根駅伝の必勝法をまとめた。春のトラックシーズンで5000mのスピードを磨くと同時に基礎となる走力を強化、夏合宿でしっかり走り込み、秋の10000mである程度の記録を出して、正月を迎えるというのが年間の大まかなスケジュールだ。
本番3週間前からは絶妙な〝微調整〟をほどこして、選手たちのフィジカル面をピークに仕上げた。それからメンタル面でも選手たちのハートに火をつける。12月28日の全体ミーティングで原監督は、「準優勝でいいよ」と伝えたのだ。その後の学生ミーティングで選手たちの〝負けてたまるか魂〟が熱く燃えていく。

 そして青学大は10人が素晴らしい走りを見せた。なかでも圧巻だったのが2区黒田朝日(2年)と3区太田蒼生(3年)だ。
 黒田はエース区間で7人抜きを披露。日本人歴代2位の1時間06分07秒で走破して区間賞に輝いた。太田は22秒先にスタートした駒大・佐藤圭汰(2年)を猛追。7.6㎞付近で追いつくと、10㎞を27分26秒で通過する。そして終盤に引き離した。10000m自己ベスト28分20秒63の駅伝男は同27分28秒50の佐藤にスピード区間で完勝。3区の日本人最高記録を1分08秒も塗り替える59分47秒で突っ走った。
 太田の記録はハーフマラソンに換算すると58分56秒ほど。3区は下り坂基調のコースとはいえ日本記録(1時間00分00秒)を大きく上回る。太田のタイムにあるベテラン監督は「ありえない」と口にしたほどの異次元の走りだった。

 

関連記事一覧