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巨人の阿部新監督は阪神との開幕カードを2勝1敗で勝ち越した(写真・黒田史夫)
巨人の阿部新監督は阪神との開幕カードを2勝1敗で勝ち越した(写真・黒田史夫)

「阿部は巨人を変えた!だが“最高です”と言っているようではダメだ」巨人の超大物OBが阪神との開幕カードを2勝1敗で終えた阿部新監督にモノ申す

 プロ野球が開幕。阿部慎之助氏(45)を新監督に迎えた巨人は、連覇を狙う阪神との3連戦を2勝1敗で勝ち越した。巨人OBの広岡達朗氏(92)は、若手とベテランをミックスさせた布陣や、機動力を絡めた戦略、ドラフト1位の西舘勇陽(22)を“7回の男”として抜擢した阿部野球を「去年と変わった」と評価したが、勝利監督インタビューで「最高です(ねえ)」と現役時代のフレーズを繰り返した指揮官の姿勢については苦言を呈した。

 「思い浮かばなかったのか、余裕がなかったのか」

 今シーズン一発目の“喝”だ。
 巨人OBで西武、ヤクルトで日本一監督となった“球界大御所”の広岡氏が、巨人の阿部監督が開幕戦後に見せた態度に苦言を呈した。
「あのインタビューはなんなんだ。現役時代と同じようなことをやっているようでは伝統の巨人を預かる指揮官としてダメだ」
 広岡氏が指摘したのは開幕戦で阪神に4-0で勝利した後に東京ドームの場内で行われた阿部監督の勝利監督インタビューだ。
 現役時代の代名詞だったフレーズを「最高ですねえ」「いやあ最高ですよ」と2度繰り返したのである。声高ではなく、しぶく答えたもので、場内は沸きに沸いたが、広岡氏は気に入らない。
「余裕がなかったんだろうな。他の言葉が思い浮かばなかったのだろう。新人監督にはよくあること。まあ、だんだんわかってくるだろうが、巨人の指揮官の言葉が軽くてはいかん。チームの調子が悪くなり、負けが込んできたときは、逆に『最悪です』と語るくらいの余裕を持たなくちゃダメだ」
 だが、広岡氏は「去年の原の野球とは変わった」と、阪神との3試合で垣間見せた阿部野球を評価した。
「キャンプ、オープン戦を通じて阿部はチームを変えている。生え抜きの若い力を育てて勝つんだという意図が見えた。佐々木なんかは、まだ無理だが、梶谷、丸といったベテランをうまくミックスさせた。梶谷を3試合目にスタメンで使わず代打待機させたのは、怪我が多く、1年を戦う体力もないことを見越しての起用法だったのだろう。あの使い方もいい」
 阿部監督は、「1番・センター」に東洋大―日立製作所を経てドラフト3位で入団した佐々木を抜擢した。巨人での開幕スタメンの新人抜擢は、阿部監督以来、23年ぶり。佐々木の5回一死三塁からのショートゴロが木浪の野選を誘い、開幕戦の決勝打となった。
 「2番・ショート」に2年目の門脇、3番には、阪神の開幕投手の青柳から通算打率が5割を超えている相性を買い、35歳の梶谷を置いた。その梶谷は、守っては森下の右中間を抜けるかと思われた強烈な打球をダイビングキャッチする超スーパープレーで失点を防いで流れを呼び込み、打っては追撃の2ランを放ち勝負を決定づけた。4番・岡本、5番・坂本、6番・大城の後の7番には、34歳の丸を配置した。丸も猛打賞で存在感を示した。昨季の阪神の優勝を「恐怖の8番」として支えた木浪にダブらせたような8番・吉川も3試合で12打数5安打の打率.417と機能している。
 そして広岡氏の指摘のように第3戦では好調の梶谷を下げて、先発の才木に昨季8打数4安打だった39歳の長野を代わって3番に起用している。
 広岡氏は、開幕直前に退団することになったオドーア、そして飛躍が期待された秋広をあえて2軍に落とした阿部監督の決断を支持した。
「チームに競争力を植え付けている。秋広も2軍に落としファームで数多くゲームに出させて鍛えるという意図が見える。若手が育ちFAで来たベテランを追い出すようなチームになることをイメージしているとすれば、その考えは正しい」

 
 そして広岡氏がさらに評価したのはメンバーの変更と共に機動力を使えるようになった部分だ。
「機動力を生かそうとしている。フルカウントからの自動スタートは当然のこと、これまではなかったようなカウントで走者にスタートを切らせていた。私は昨年から言っているが、阪神との決定的な違いは、つなぎの部分だった。そこに足を絡めてきたのは評価できる」
 開幕戦では5回一死三塁で走者の吉川にギャンブルスタートを切らせた。佐々木のショートゴロで吉川は生還したが、岡田監督がリクエストを発動したほどのクロスプレー。もしゴロゴーであればアウトだっただろう。先制点を奪い、さらに一死一塁で打者門脇―走者佐々木でエンドランを仕掛けた。併殺に終わるはずの投ゴロで走者を進め、梶谷の2ランを呼び込むことになった。第2戦でも0-0で迎えた4回無死一塁で梶谷にエンドランをかけた。第3戦では3回二死一塁で門脇の打席で走者の吉川は単独スチールに成功している。
 一方、最大の弱点だったブルペン陣に立ち直りの兆しが見えていることを広岡氏はクローズアップした。特にドラフト1位の西舘を「7回の男」に抜擢し、いきなり1、2戦に連投させたことを「阿部らしい」と称えた。
「普通であれば、第2戦のピンチなどルーキーに投げさせるのは難しいところ。ああいう腹をくくった起用ができるのが阿部」
 西舘は第1戦に7回のマウンドを任され三者凡退。第2戦では、3-0で迎えた7回に先発のグリフィンが阪神打線につかまり、一死一、三塁のピンチを迎えると、代打糸原がコールされた場面で、右腕の西舘を送り込んだ。西舘は糸原にフルカウントまで粘られたが、150キロのストレートで押し込みレフトフライ、近本のライトスタンドに向かって舞い上がった打球も、西舘のカットの球威が上回ったのか、フェンスの手前で失速した。阿部監督は第3戦はベンチから外したが、弱点だった7回を西舘が埋める可能性が出てきた。ただ第3戦では8回の男、中川が森下に0-0の均衡を破る決勝3ランを浴びて不安は残した。
 広岡氏が言う。
「阪神はオープン戦が悪かった。それを引きずって本番に入ったのが響いたのだろうが、第3戦の勝ち方を見ていると、やはり優勝の最右翼。オープン戦から他球団も見ているが、今年のセ・リーグは、阪神と巨人が優勝を争うことになる」
 “球界大御所”は、今季阪神と巨人が優勝を「争うだろう」ではなく「争うことになる」と断言した。連覇を狙う阪神と2年連続Bクラスからの逆襲を狙う巨人をセ・リーグのペナントレースを引っ張る2強に指名した。
 開幕2つ目のカードで巨人はバンテリンドームに乗り込みまだ白星のない中日と対戦、阪神は準本拠地の京セラドーム大阪で、ルーキー度会が3試合で2本塁打を放つなどし2勝1敗で広島に勝ち越した横浜DeNAと3連戦を戦う。
(文責・駒沢悟/スポーツライター)

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