
「今年“天中殺”。だから待つことが大事」6.8有明で“世界前哨戦”決定の那須川天心が中谷、西田、武居、堤のバンタム級世界王者の「誰と戦いたいか」をあえて明言しなかった理由を激白!
モロニーに比べると明らかに格下。世界前哨戦とうたっている割に相手としては物足りない。その点を天心に突っ込んだ。
「モロニー以上に知名度のある海外選手がいるかと言えばいないと思う。他の選手とも交渉してもらっていた。中谷選手が戦った相手もいて決まりかけていたが、都合があわなかった。その中(候補)で一番強い選手とやる。こっちが決められない」
おそらくもう一人の候補は、中谷が2度目の防衛戦で6回TKOで沈めたペッチ・ソー・チットパッタナ(タイ)だったのだろう。だが、こういうマッチメイクの“タブーの部分”をしっかりと自覚して向き合えるのが天心の魅力でもある。
本来なら2月24日にサンティリャンのレベルのボクサーと戦い、6月にモロニーと対戦する計画だったそうだが、天心の成長が著しいため、前世界王者への挑戦が前倒しにされ、逆に世界前哨戦の相手が物足りない相手となった。
当然、“アンチ天心”は、こういうマッチメイクには黙っていない。天心はSNSの反応を予測してこう訴えた。
「世の中に言いたいのは、“文句は言うな。仕方ないことだ”と。(ボクシングのマッチメイクは)そういうもんだし“ボクシングを知れ!”と言いたい」
ただそういう相手だけに内容と「KO決着」という結果を求められる。
「攻防のレベル高いところをちょとずつ見せていければいいなと。KOはもちろんあるが、狙いすぎると倒せない。今まではおおざっぱな課題だったが、今は細かい課題になった。細かい部分を調整して集約していけば倒せるかな」
天心はリアルに目標を語った。
この試合が世界前哨戦であることは間違いないが、不思議なことに天心は、記者会見、その後の囲み取材を通じて、誰のベルトをターゲットにしているかという具体的なチャンピオンの名前を出さなかった。
いや出せなかったと言っていい。
中谷への印象を聞かれて「印象か。印象…」と、長い時間考えて「まあ誰がみても強い。パウンド・フォー・パウンドに入っているわけじゃないですか」とリスペクトを示した。そこからは「中谷選手に限らず、日本人が結構(パウンド・フォー・パウンドに)入ってる時代にボクシングができて幸せだと思う。だからこそ比較されるのはわかるし試されていると思う」と、焦点を誤魔化して、中谷が洋服の広告に起用されていることや、バラエティ番組の「さんま御殿」に出演したことなどを天心流でいじって話題をうまくすり替えてみせた。
なぜなのか。
実は語りたくても語れないボクシング界の特殊事情がある。
「世界に近づいているなというのはあるが、その立場に立たないと本当にやるってならないと意識はしない。他の格闘技なら喧嘩して(会見などで)後ろからベルトを取って“うわー”とやればできるがボクシングはできない」
天心がそう説明した。
当初、ターゲットにしていた元K-1王者の武居は5月28日に横浜BUNTAIでの防衛戦が決まっていてそれをクリアすると9月に1位のクリスチャン・メディナ(メキシコ)との指名試合をクリアしなければならない。天心の世界戦計画は11月の「PrimeVideoBoxing14」で予定されているため、そこには間に合わない。お互いに事情は理解していて2月24日に天心がモロニーに勝利した後のリングに武居が上がったが、天心は「必ず世界チャンプになるんでいつかどこかで戦いましょう」と言い、武居は「またこのリングで会いましょう」と返すに留まった。天心が世界王者になってから「統一戦で戦おう」というニュアンスに変わっている。