
「今年“天中殺”。だから待つことが大事」6.8有明で“世界前哨戦”決定の那須川天心が中谷、西田、武居、堤のバンタム級世界王者の「誰と戦いたいか」をあえて明言しなかった理由を激白!
タイミング的には中谷と西田戦の勝者が絶好だが、この試合の勝者にはまずIBFとの指名試合が義務づけられている。そして中谷は来春東京ドームで計画されているスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(大橋)とのスーパーマッチに向けて、スーパーバンタム級でのテストマッチを行いたいとの意向があり、王座返上の可能性が濃厚。この日「これがバンタム級ラストマッチか?」の質問を受けて「チームと相談して」と答えるに留まった。また西田もバンタム級に留まるには、減量が厳しく、統一戦に成功しても、3団体統一に向かうのではなく、ベルトを返上してスーパーバンタム級に上げる可能性が高い。
つまり天心の11月の世界戦は、空位となったWBC、あるいは、IBFの王座決定戦へ挑むことになるのだ。
天心はWBCは1位で指名挑戦権を持ち、IBFは4位だが、1、2位が空位のため、現時点で最上位の3位にいて指名挑戦者であるホセ・サラス・レイエス(メキシコ)に次ぐ4位の天心に王座決定戦への出場資格がある。IBFの場合は、レイエスと戦うことになるわけだが、ちなみにレイエスはサウスポーだ。
一方のWBCは、2位はビッグネームの元2階級制覇王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)で、王座決定戦といえどもマッチメイクは簡単ではない。3位には元WBA世界バンタム級王者の井上拓真(大橋)、4位には元WBC世界フライ級王者の比嘉大吾(志成)がいるが、井上は堤とのリベンジ戦をターゲットに定めており、比嘉はまだ正式には再起を決めていない。つまり中谷―西田の勝者が返上を宣言しない限り何も決めることができず、しかも相手もわからない。天心が世界戦の具体的なターゲット名を口に出せない理由はこういう事情だ。
天心にその問題を直撃した。
「状況がわかんない。わかんないことを言って変に期待されるのも嫌ですからね。今回の世界前哨戦に勝って、どうなるかを待つしかない」
すると面白いことを言い出した。
「実は今年天中殺なんですよ」
令和の時代のど真ん中にいる26歳の天心から懐かしいワードが出てきた。
ウィキペディアによると、天中殺とは、「四柱推命と算命学内の論であり、干支において天が味方しない時とされている」というもので、生年月日から、その時期が算出される。1979年に、当時、長嶋茂雄氏が率いていた巨人が「優勝できない」ことを的中させて日本中に「天中殺」ブームが巻き起こった。天心はそういう昭和の文化に興味を持っており詳しい。
天心は今年がその最悪の「天中殺」にあたるという。
ただ天中殺には解消方法も用意されている。
「ここが大事で、天中殺のときは受動的になんなくちゃいけないんです。新しいことをやるんじゃなく、来たものを受けなきゃいけない。だからその流れに沿っていきたい」
どの王者と戦いたいと、能動的に訴えるのではなく、王座決定戦で、WBCあるいはIBFから誰と戦うかの指令を受動的に受けることが、天中殺の天心にはふさわしい運命だそうだ。
まさに天心が「のろしをあげる」という2025年は彼の思うがままに動いている。
(文責・本郷陽一/ROSNPO、スポーツタイムズ通信社)