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井上尚弥がラスベガスで逆転の8回TKO勝利(写真・山口裕朗)
井上尚弥がラスベガスで逆転の8回TKO勝利(写真・山口裕朗)

大橋会長が明かす井上尚弥のラスベガス逆転TKO勝利の壮絶舞台裏「安全策の判定を狙わずに倒しにいった」…2回のダウンは「ネリ戦より深くパンチが入っていた」

 3ラウンドに井上は何事もなかったようにジャブから組み立て直した。ジャッジの3者がこのラウンドは井上を支持している。
 大橋会長は「次のラウンドを見てポイントを取っていたので大丈夫だと思ったが、判定でいくのか、倒しにいくのか、ちょっと心配だった」という。
 大橋会長は判定狙いでいいと考えていた。
 元3階級制覇王者の八重樫東トレーナーと共に「判定でいい」「ポイント、ポイント」と声をあげた。真吾トレーナーがインターバルごとに「小さく、コツコツ」という言葉を繰り返したのにもその意図があった。
 だが、井上は判定勝利など狙わずに倒しにいった。大橋会長は、「カルデナスのパンチは最後まで生きていた。怖かった」というが、被弾をしないようにディフェンスに細心の注意を払いながらも井上は攻撃の手を緩めなかった。
 6ラウンドには、壮絶な殴り合いになったが、井上が怒涛の連打を上下に打ち込みコーナーに釘付けにした。試合後、カルデナスが「パワーはそれほど凄くはなかったが、6発、7発、8発という連打が凄かった」と振り返った場面である。
 7ラウンドには、右のショートの4連打でついにダウンを奪い返す。「ボデイが効いていた」(大橋会長)カルデナスはコーナーを背にしゃがみこんだ。
 そして8ラウンド。距離を詰めてロープへ吹っ飛ばすと炎の猛ラッシュ。右アッパーが入り、連打をまとめたところでレフェリーが間に入って試合をストップした。一発逆転のカウンターを狙い続けていたカルデナスは、「まだ大丈夫だ」とレフェリーに抗議したが、逆に「君を救うために止めたんだよ」と諭されていた。
 大橋会長は判定ではなくKOを狙った井上の姿勢に敬意を表した。
「安全策でいくか、倒しにいくかには賛否両論はあると思う。安全運転なら楽に勝てたが、あえて倒しにいった。でも倒しにいくから軽量級で史上最高額をもらえ、パウンド・フォー・パウンドの1位を争う選手になっている」
 米メディア「ザ・スポーティングニュース」によると、今回のファイトマネーは、推定800万ドル(約11億5000万円)。井上自身の過去最高額の更新であり、もちろん、軽量級では史上最高額だ。大橋会長は、井上が貫くファイトスタイルがその金額に値すると賞賛した。
 メキシコの記念日である「シンコ・デ・マヨ」ウィークには、3日連続でビッグマッチが組まれた。だが、問題児のライアン・ガルシア(米国)がダウンを奪われて判定負けを喫して、スーパーミドル級の4団体統一王者に返り咲いたサウル”カネロ”アルバレス(メキシコ)も、ブーイングが起きるなど精彩を欠いた判定勝利。井上曰く「しょっばい試合」が続いていた中で、最後にESPNやリング誌に「年間最高試合候補」と評されるKO決着の試合を演出した。
「シンコ・デ・マヨで判定が続いていて、“ここは自分が”というのがあった。(試合前に)そういう話も出ていた。それをわかっていていけるというのがね」
 大橋会長は、世界の期待に応えたモンスターの姿に感嘆していた。

 

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