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井岡一翔とWBA王者のマルティネスが無事調印式を終える(写真・山口裕朗)
井岡一翔とWBA王者のマルティネスが無事調印式を終える(写真・山口裕朗)

「これが最後になるかもしれない」36歳の井岡一翔の壮絶な覚悟と戦う理由…不利の予想の中でWBA王者に舐めた態度を取られた元4階級制覇王者が胸に秘めた思いを明かす

 前戦では怒涛の波状攻撃で井岡を圧倒した。
 勝敗のポイントを聞かれ、「パンチが来たら顔を左右に動かす。私は相手の顔にパンチを入れる。ニコリノ・ローチェのような感じで戦いたい」と、立ち上がって上体を振るデモンストレーションまでやった。
 ローチェは、1968年12月に当時の蔵前国技館で、“ハンマーパンチ”で知られた藤猛からWBA世界スーパーライト級王座を10回TKOで奪い、5度防衛を果たしたアルゼンチンのレジェンド。その母国の名王者の超攻撃的スタイルを再現して井岡を返り討ちにするというのである。
 一方の井岡は、その不利予想を冷静に受け止めた。
「気にしていない。前回の試合からそう評価されるのは仕方がない。今回勝利してそれを覆したいと思う」
 井岡は、戦術については「細かいことは話せない」と隠したが「練習してきたことを出すだけ」という。
 公開練習時には大晦日の予定がさらに5か月延期されたことで用意した戦術を「より深く落とし込めた」と話していた。
 ーーあのアルゼンチンに招待とグルメ発言。舐めているのでは?
 そう聞くと「ふふふ」とだけ笑い、コメントをしなかった。
 井岡は再戦に強い。WBA世界フライ級王者時代の2015年には、マルティネスと同じアルゼンチン人のファン・カルロス・レベコとの初戦は2-0の僅差の判定勝利だったが、再戦は11回TKOで完全決着。2018年12月にはWBO世界スーパーフライ級王座決定戦でドニー・ニエテス(フィリピン)とマカオで戦い1-2で判定負けしたが、2022年7月の再戦では3-0判定勝利、2022年12月には、WBA世界同級王者のジョシュア・フランコ(米国)との統一戦に引き分けたが、2023年6月の再戦では3-0判定勝利でリベンジに成功している。
 サラストレーナーは「ボクシングはより強いものが勝者となる。あの夜はマルティネスが勝っていた。確かに1敗はしたが、あの試合から学ぶものがある。井岡には、ミスを修正する力があるから再戦に強い。私は過去に何人も世界王者を作ってきたが、井岡のプロ意識は最も信頼する一人。このリベンジを成功させたい」と太鼓判を押した。
 前回の戦いでは封印した、本来、井岡が得意とする距離を生かした出入りのボクシングがリベンジのカギである。

 

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