
“なりすまし記者”井上尚弥が乱入して聞き出した「武居由樹vs那須川天心」のビッグマッチの実現可能性とは?
武居が前夜に眠ったのは午前4時。厳しい判定勝利が続いたモロニー戦、比嘉戦の映像を見返したことはなかったが、昨夜は「5、6回…10回ほど」見直したという。
昨年12月に全治4週間の「右肩関節唇損傷」の怪我を負い、1月24日に予定されていたV2戦が延期となった。3か月以上の期間を空けたが、大橋会長は「不安はあった」という。八重樫東トレーナーも「段階を経て徐々に動かしてスパーの再開が(試合から逆算して)ギリギリだった。予想より時間がかかり、実戦が乏しかったのが不安要素だった」と明かす。
スパーが再開できたのが4月上旬。武居も「結構焦っていたかも」と振り返った。
そのピンチを乗り越えて、過去にダウン経験のない15戦無敗の元ムエタイのラジャダムナン王者に、1ラウンドで3度もダウンを奪って圧勝した。天心とのスーパーマッチへの気運を武居がその左拳で高めたことは間違いない。
この試合までは、バンタム級の4人の王者の中での序列は最下位だった。米老舗「リング誌」が定めているバンタム級のランキングでは1位中谷、2位西田、3位堤で、4位が武居。今回の劇的勝利によって予想される変動を前に武居は、「下の方がいい。そこから上がっていくほうが燃える。チャレンジャーなんで」と“下剋上”のスタートを宣言した。
重要なのは次戦の指名試合だ。メディナは、28戦24勝(17KO)4敗のボクサーファイター。2023年8月に大阪で行われたIBFの挑戦者決定戦で西田に0-3判定で敗れたが、その後、再起すると、すべてKOで3連勝中で昨年11月には、無敗のホープのアレクシス・モリナ・アギーレ(メキシコ)をボコボコにして5ラウンドTKO勝利でWBOラテンバンタム級王座を獲得している。天心のスパーリングパートナーとして複数回来日しているが、「来る度に成長している」との評判のファイターで、最強の挑戦者と言っていい。
「西田選手とやったことくらいしか知らない。試合も見たことがない。これから切り替えてすぐに次の準備はしていきたい」
1ラウンドTKO勝利で課題を持ちにくいが、武居は「ストレート系をもう少し打てるようになりたい。これまで左は、ボディでしか倒せていなかった。左フックで倒せたのは、いい勉強、いい機会になったのでストレート系、左アッパーを覚えられれば」と、さらに強くなるために貪欲だ。八重樫トレーナーも「一番の魅力である強いパンチを当てる技術をもっととがらせたい」と言う。
「指名試合で、ああいう勝ち方ができればもっともっとアピールになる」
武居は群雄割拠のバンタム級戦線の主役に躍り出る決意だ。