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日本ダービーでクロワデュノールが1番人気に応えて雪辱V
日本ダービーでクロワデュノールが1番人気に応えて雪辱V

「馬を信じ自分を信じ。すべてに意味が」1番人気クロワデュノールと北村友一騎手の日本ダービー制覇の裏にあった“大河ドラマ”…背骨を8本折る騎手生命危機を乗り越えて

 競馬の祭典「第92回日本ダービー」(東京芝2400メートル、G1)は1日に行われ、クロワデュノール(牡3、斉藤崇)が単勝1番人気2.1倍の期待に応えて先行策からの圧勝レースで押し切り、2分23秒7のタイムで優勝した。皐月賞では1番人気の支持されたものの2着の敗れた雪辱を果たした。鞍上の北村友一騎手(38)はデビュー20年目にして栄えあるダービージョッキーの称号を初めて手にしたが、ここに至るまでには壮大な大河ドラマがあった。

 ”師匠”のダービージョッキーもNHK出演中に号泣

 勝つべくして勝った。
 残り350m。慌てず騒がず、クロワデュノールの背で追い出しを我慢していた北村友一騎手は右ムチを一発叩き込んだ。これが勝利への号砲となる。
「俺に任せとけ、というぐらい馬も自信を持っていました」
 手綱を通して、しびれるような手応え。しかし、内で粘り込みをはかる武豊騎手騎乗のサトノシャイニングを一気には交わさない。後続の急襲を意識しながらじわじわとパス。今度は左ムチを入れ、中団から馬場の外めを鋭い脚で伸びてきたマスカレードボールの追撃を3/4馬身封じ込めた。
 まさに人馬一体。スタートから完璧な立ち回りだった。ゲート内で前カキをしており、出遅れが心配されたが、スムーズに出すとすかさず3番手。1000m通過が1分ジャストという平均的な流れの中、そのままの位置でリズム良く進め、最後の直線も馬場のいいところに持ち出した。どの局面でも余裕たっぷり。断然の1番人気で2着に敗れた皐月賞は早め早めの仕掛けが裏目に出て、不利にもあったが、その同じ轍は踏まなかった。
 2022年に生まれたサラブレッドは7950頭。その頂点へ導いた北村騎手は右手人差し指を高々と突き出し、ナンバーワンをアピール。ウイニングランでは何度も何度も愛馬を指さし、その走りを讃えた。お立ち台。北村騎手の表情は晴れやかで、大きな仕事をやり遂げた達成感に包まれていた。号泣した昨年暮れのGⅠホープフルステークスとは違い、涙はなかった。
「僕がダービージョッキーになれたというよりもクロワがダービー馬になれたことが何よりうれしい。僕の思いは馬を信じ、自分を信じること。最後は絶対伸びると信じていた。余計なことをせずにリズム良く、最高のエスコートができた」
 これほど仲間から応援され、喜ばれたダービージョッキーも珍しいのではないか。レース前の栗東トレーニングセンターでは厩舎関係者の会う人会う人に「がんばれよ」と声を掛けられ、ダービーを制覇したこともある調教師から「ダービーは人。今年は友一でしょう」とエールを送られていた。
 レース後も珍しい光景が見られた。何と、ほとんどのジョッキーと祝福のハイタッチ。さらにNHKのゲスト解説だった安田隆行元調教師は人目もはばからずに号泣し、ネットがざわついたほどだ。自身も騎手時代にケガを克服し、名馬トウカイテイオーとのコンビでダービージョッキーに輝いた経験がある。その後、調教師としても、北村騎手をバックアップしていた。そんな深いつながりから熱い思いがこみ上げてきたのだろう。

 

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