
「166kmを見たら自分もまた努力できる」なぜ西武4年目の羽田慎之介は日本人左腕史上最速の「160km」を叩き出せたのか…その1球は四球に終わるも西口監督や古賀捕手が絶賛
大台到達は時間の問題だったと強調した古賀は、清宮とレイエスが羽田を嫌がっている雰囲気を何度も感じていたと明かした。
「嫌だと思いますよ。今、左であのように投げるピッチャーはいないので。それ(連続三振)は羽田にとって自信になるし、僕にとっても『いける』という材料になるので」
野村に四球を与えた直後に自らマウンドへ向かい、甲斐野央(28)との交代を告げた西口文也監督(52)は「160キロ、出たの?」と苦笑しながら、首位を快走する日本ハムのクリーンナップへ真っ向勝負を挑んだ羽田のピッチングを評価した。
「この前は頭に当てたのがありましたけど、今日それを払拭するじゃないけど、本当にいいボールを投げていたので。そこはよかったと思います」
埼玉県所沢市で生まれ育ち、実家が西武の本拠地ベルーナドームに近い距離にある羽田は、小学生時代には西武のジュニアチームでプレーした縁もある。
八王子高校時代は左ひじの故障が続いた影響もあり、甲子園には出場できなかった。しかし、球数を20以内にとどめ、変化球も制限する条件下で登板した3年春の東京都春季大会では149キロをマーク。身長191センチ体重84キロの恵まれたサイズから「和製ランディ・ジョンソン」の異名もつけられた羽田は、2021年のドラフト4位で西武に入団した。
羽田自身は自らの球質が打たれやすいと自覚し、球速を上げていくことで欠点をカバーする青写真を描いていた。いつしか「160キロ」と具体的な数字を目標として公言する羽田を、長身から投げ下ろす本格派の先発投手として育成したい球団側も同じ考えを描き、徹底したウエイトトレーニングで上半身と下半身を鍛えさせた。
西口監督も二軍を率いた昨シーズンまで、コースを狙う細かい制球よりも、まずは腕をしっかりと振る投球を優先させた。二軍で4勝無敗、防御率0.33の数字を引っさげ、プロ入り後で初めて出場選手登録されてから3日後の昨年5月14日。日本ハム戦で中継ぎ登板した羽田は巨躯から投げ下ろされる、最速155キロのストレートを武器に鮮烈な一軍デビューを果たした。