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比嘉大吾が公開練習で強烈なパンチを披露(写真・山口裕朗)
比嘉大吾が公開練習で強烈なパンチを披露(写真・山口裕朗)

「なぜか外傷を負う不思議なパンチ」超異例の3戦連続で世界戦に挑む比嘉大吾が大記録を達成する可能性のこれだけの理由

 7月30日に横浜BUNTAIでWBA世界バンタム級王者のアントニオ・バルガス(28、米国)に挑戦する元WBC世界フライ級王者で同級2位の比嘉大吾(29、志成)が17日、東京目黒区の同ジムで練習を公開した。超異例の3戦連続での世界挑戦となった比嘉は、「間違いなく(4度目は)ないので取らないといけない」と悲壮な決意を口にしたが、“地獄”のトレーニングを課してきた野木丈司トレーナー(65)は「ここ3戦の中で一番いい。序盤決着もある」と、7年3か月という日本過去最長ブランクでの王座返り咲きを予告した。

 

比嘉とコンビを組む野木トレーナー(写真・山口裕朗)

 「間違いなく(4度目の世界挑戦は)ない」

 志成ジム関係者が「ギネスでも申請しましょうか」と冗談を飛ばすほど超異例の3戦連続の世界戦。昨年9月のWBO世界バンタム級王者の武居由樹(大橋)戦、今年2月のWBA世界同級王者、堤聖也(角海老宝石)戦に続いての大舞台が13日後に迫った。武居戦は判定負けで、堤戦はドローだったが、ダウンを奪う激闘を演じたことで、名勝負を生み出す挑戦者としての商品価値がアップした。
 今回は、堤が左目の手術で休養王者となり、暫定王者だったバルガスが正規王者に繰り上がり、優先的な挑戦権を持っていた前王者の井上拓真(大橋)がまだ怪我が完治しておらず、上位にいた那須川天心(帝拳)も試合時期が重なっていたため比嘉にチャンスが巡ってきた。
「大変光栄に思っている」としながらも「絶対に勝つ」と誓い「間違いなく(4度目は)ない。(世界を)取らないといけない」との悲壮な覚悟をも口にした。
 コンビを組む野木トレーナーも言う。
「4度目?もうごめんです。先があるかないかの二択の試合だと思う」
 だが、その野木トレーナーの言葉の裏を返えば、ここでもう世界挑戦にピリオドを打てるという自信だ。
「ここ3戦で一番、精神状態がいい。自分からやる!と言った責任感でしょう。技術的には、もともと実はうまい選手なので、そこはキープできていた。そこに2戦の積み上げがある。大吾も痛い目にあって色々と学習した」
 武居戦が決まりそうな段階で野木トレーナーは「半年時間が欲しい」と二宮マネージャーに訴えた。挑戦者にそういう融通はきかなかったが、結果的に武居戦、堤戦と戦う中でその「半年の上積み」ができた。
 堤戦ではダウンを奪ったラウンドにダウンを奪い返されるという失態を演じた。
 だから「もらわないこと。できるだけダウンは避けたい。ガードですね」と比嘉は、打ち終わりのガードを練習のテーマに置いてきた。だが、やはり比嘉の武器となるのは、一撃必殺のパンチ力だ。
 この日の公開練習で1ラウンドのスパー相手を務めるなど、ほぼメインで仮想バルガスのスピード面を担ってきた同門のWBA世界ライトフライ級5位の吉良大弥がこんな証言をした。
「不思議なんですが、ヘッドギアをしていても大吾さんとスパーすると顔に外傷を負うんですよ。そういうパンチの打ち方がしているんでしょうか。とにかく傷だらけになっちゃうんです。相手は嫌でしょうね。パンチの質もズシリと重い。あれをもらうと倒れますよ」
 まるで突風で被害を与える“かまいたちパンチ”だ。
 ミットを受ける野木トレーナーもパンチの変化を実感している。
「パンチが違ってきています。空想じゃなく気持ちが入ったパンチって本当にあるんですよ」
 バルガスは19勝(11KO)1敗1無効試合の戦績を誇るオーソドックススタイルの強打のボクサーファイター。2回戦で敗れたがリオ五輪出場の経験もある元アマエリートで、2024年12月の暫定王座決定戦で、ウィンストン・ゲレーロ(ニカラグア)を10回TKOで下して暫定王者となった。
 比嘉は「結構振ってくる。ガードも高い」と警戒。
 野木トレーナーも「基礎がしっかりとして倒されても逆転する力がある。楽観していいところはひとつもない」としながらも弱点は見つけた。
「打たれ強くはない。過去大吾以上に強い相手とやっていないのでプレッシャーは感じると思う。そして打ち合いのなかに隙があるんです。ガードが下がる。当然改善してくると思うが、そこの展開の中で狙えるときは狙いたい」

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