
「代打の神様という言葉は死語に」里崎智也氏が指摘するDH制導入で起きる“常識のウソ”…2027年からのセ・リーグ採用で野球はどう変わるのか?
そしてこう続けた。
「出場機会だけで見れば、逆にDHで選手の起用の幅は減りますよ。代打の神様という言葉は死語になります。セでは投手、捕手に代打機会があるが、DHなら捕手か、よほど調子の悪い選手、守備固めくらいしかない。むしろ選手の出場機会は減るんですよ。城島がマスクをかぶっていた時のソフトバンクの全盛期は、ほぼ選手交代がなかったですからね」
代打や控え選手の出場機会はDHが導入されれば減るだろう。また今回のDHの採用理由としては否定されたが、スラッガーの育成や、野手9人を相手にし、先発投手のイニング数が伸びるなど、DHの野球では、投手のレベルアップにつながるとの見方がある。原辰徳氏が、日本シリーズ惨敗後に主張したセパの格差解消というDH効果だ。
だが、里崎氏は「僕はその考えには前から反対論者です」とキッパリ否定した。
「1990年代には、数多くの名投手がセ・リーグにいたじゃないですか。スラッガーもそうです。近年、パのレベルが上だと評価されているだけで、DHの効果で、セパに格差が生まれたわけじゃないですよ」
巨人の斎藤雅樹は、1990年から3年連続で20勝をマーク。メジャー挑戦した横浜の“大魔神”佐々木主洽は、セパを通じてナンバーワンストッパー。打者では、1998年、2000年と本塁打王を獲得した巨人の松井秀喜、1991年に首位打者を獲得したヤクルトの古田敦也らもいた。
一方で高校野球のDH導入には「懸念がある」という。
「アマチュアはデメリットが大きいと思うんです。高校野球で言えば、選手を集めることのできる私立高校が有利になりますよ。センスのある投手が主軸を打つことの多い公立校がどうしても不利になります。ますます格差が広がるんじゃないですか。高校野球でも大谷ルールを同時に採用するそうなので、第二の大谷が出てこなくなるという危険性は、回避されたのかもしれませんが、まずピッチャーはバッティング練習をしなくなりますよ」
メジャーでは、2022年から、いわゆる「大谷ルール」が採用され先発投手が指名打者を兼ねることができ、マウンドを降りた後もバッターとしてそのまま試合に継続出場することが可能になった。高校野球ではその「大谷ルール」を同時に採用し二刀流を目指す選手の可能性を残した。里崎氏はそこに救いの余地はあるという見方だが、私立と公立校の格差が広がると危惧している。
セと高校野球、大学野球のDH導入が、日本の野球界にもたらす効果が見えてくるのは、数年後なのかもしれないが、歴史的な決断を下したのは間違いない。