
「佐藤(輝明)がなんでこうも打てるのかわからん。こっちが勉強したいくらいだ」バンテリン騒然のサトテルの逆転28号3ランに93歳の球界大御所が思わず感心!
「まったく打てる気がしない打席があって、相手がうまく攻めさえすれば、大丈夫だという決定的な弱点がある。だが、その弱点をたまにポンポン打つ。そこが謎なんだ。確かに相手バッテリーが必要以上に警戒することで、失投を呼び、その打ち損じは減った。私は前々からパワーは十分なんだから、球場の外までボールを飛ばす必要はない。もっとセンター返しを意識しなさいと提言してきた。今季はなんでもかんでもフルスイングするのではなく、下半身主導でバットが素直に出ていることと、センターから逆方向を意識があることが、打ち損じの減っている原因なんだろうけど、森下のように勉強しているな、研究しているなと思わせる形跡を佐藤からは感じない。言い方は悪いが、超一流にはなれない選手だと思っていた。だからなんでこんなに打てているのかがわからんのだ」
内角をストレートで攻められ、外角へ落とすという揺さぶりに弱いとされていた。実際、ここまで三振は115で、三振率は27.3%で、不甲斐ない成績に終わった昨季の26.8%を若干上回っている。ただ球種別にみると、フォークとスプリットの落ち球への空振り率が、若干改善されているのが特徴ではあるが、広岡氏が「わからん」と評価するのも無理はない。
しかし、打率は、過去最高をキープ中。ランキング5位の打率.281でトップの中野の.288と7厘差。3冠王も狙える位置にいる。
本塁打が出にくいことで知られるバンテリンドームで今季早くも4本目。球場別にみると試合数が断トツに多い甲子園の7本がトップで、東京ドーム4本、マツダスタジアム4本、神宮球場3本、横浜スタジアム1本と、意外にも狭いハマスタを苦手にしているが、球場の広さも関係なく万遍なく打てている。
佐藤はその点を聞かれ、こう返した。
「本当によく飛んだと思います。いい当たりじゃないとなかなか入りにくい球場なのでそれだけ打てているのは自信になります」
苦手な球場がないのは、量産の必須条件である。
残り44試合で、このままのペースで打てば、ちょうど40本の大台に乗る。
阪神では、2005年に金本氏がマークして以来、20年ぶりの大台。「打低投高」の傾向が強まっている近年のプロ野球において、昨季もセ・リーグの本塁打王、ヤクルトの村上が33本、パ・リーグがソフトバンク山川の34本で、パ・リーグの現在トップの日ハム、レイエスが21本に留まっていることを考えると、佐藤が突き進んでいる道は、歴史を動かすものだと評価していい。
広岡氏も「40本?打てるかもしれないな。まったく想像ができんよ」と、その可能性を否定しなかった。
4番が打てば負けない。9回に追加点をあげたチームは今季5勝7敗と唯一負け越していた中日を蹴散らして優勝マジックを「33」に減らした。
佐藤が名古屋の虎ファンにこう約束した。
「ここから大事な時期が続くと思うので、またしっかりみんなで頑張っていきたい。明日も勝ちます」
今日の先発は柳。今季は1試合だけで3打席立ち2四球一三振の対戦成績となっている。
(文責・駒沢悟/スポーツライター)