• HOME
  • 記事
  • 格闘技
  • 「医務室で一度は意識が戻ったのに…」2日の日本ライト級挑戦者決定戦TKO負け後に開頭手術の浦川大将さんが死去…同じ日に試合をした神足茂利さんに続く訃報
2日の日本ライト級挑戦者決定戦でTKO負け後に担架で運ばれ緊急開頭手術を受けていた浦川大将さんが死去(写真・山口裕朗)
2日の日本ライト級挑戦者決定戦でTKO負け後に担架で運ばれ緊急開頭手術を受けていた浦川大将さんが死去(写真・山口裕朗)

「医務室で一度は意識が戻ったのに…」2日の日本ライト級挑戦者決定戦TKO負け後に開頭手術の浦川大将さんが死去…同じ日に試合をした神足茂利さんに続く訃報

 リング事故が相次いでいる。
 2023年12月26日に「バンタム級モンスタートーナメント」決勝で現在WBA世界バンタム級休養王者で、当時日本同級王者の堤聖也(角海老宝石)に挑んだ穴口一輝さんが、4度ダウンする激闘をフルラウンド戦い抜いたが、試合後に意識を失い、緊急開頭手術を行い、翌年2月2日に23歳で亡くなった。
 今年に入って5月には、IBF世界ミニマム級タイトルマッチで、重岡銀次朗(ワタナベ)が救急搬送され、開頭手術を受けた。ICUから一般病棟に移り、故郷、熊本のリハビリ病院への転院が検討されるまでに回復はしたが、未だ意識は戻らない状況。そして前日に神足さんが亡くなった。
 日本のプロボクシングを統括、管理するJBCでは、穴口さんの事故の後に日本プロボクシング協会とタッグを組み、東西で専門家を招いての医事講習会を開き、リング禍が起きる原因や過程などを啓蒙し、脳髄との因果関係が考えられる水抜き減量に関しても「体重の4%までにとどめるべき」などの具体的な例をあげて注意も促した。協会は日本タイトル戦と同挑戦者決定戦に限り、30日前(規定体重の12%増以内)、2週間前(7%増以内)の事前計量を取り入れるなど、再発防止策を練ってきた。だが、リング禍をストップすることはできなかった。
 これらの事態を重く見たJBCは、原因究明と再発防止に向けての緊急プロジェクトをスタート。12回戦のOPBF東洋太平洋、12回戦及び10回戦で開催されていたWBOアジアパシフィックを10回戦に短縮することを決定し、日本タイトルを10回戦から8回戦に短縮することも議論したいという。そしてレフェリー陣には、安全を確保するための早期ストップを周知した。
 さらにオフェンス技術の急激な進歩にディフェンス技術が追いついていないことも事故の遠因として考えられるため、プロテストでのディフェンス能力のチェックを厳格化することにすぐ手を付けるという。
 また水抜き減量の歯止めに関しては協会が実施している事前計量でオーバーしている場合の試合中止や、当日体重との差が大きいボクサーへは転級を義務づけるなどの罰則規定を設けることを検討。総合格闘技の「ONE」では、無理な水抜き減量に歯止めをかけるため、体内の水分量を尿の比重でチェックするハイドレーションテストを採用しているが、そのシステムも研究、調査したいという。
 さらにWBCが導入している体調管理アプリの「ボックスメッド」を取り入れ、ボクサーの体調管理をJBCで一元化することも模索したい考え。
 中谷潤人は、WBCの世界戦の試合前に義務づけられているMRI検査を定期的に行うことを提言した。JBCはその導入にも前向きの姿勢を示した。
 JBCが、水面下で進めていた大学の研究機関とコラボしての臨床データの分析やリング禍が起きる原因究明と防止策についての研究も本格化させる方向。
 何をすればリング禍を防げるかの明確な答えはわからない。脳を揺らしてダメージを与える競技。常に危険とは背中合わせではある。
 JBCの安河内剛本部事務局長は、「原因を究明して、やれる手はすべて打ちたい」とコメントしていた。2人の悲劇を教訓に変えなければ、ボクシング界の明るい未来は見えてこないのかもしれない。
(文責・本郷陽一/RONSPO、スポーツタイムズ通信社)

関連記事一覧