
なんだ?それ!井上尚弥と対戦予定だった2人の激突はWBAフェザー級王者ボールがグッドマンに3-0判定勝利も見せ場なき“塩試合”…モンスターのライバルとして存在感を示すことできず
プロボクシングのWBA世界フェザー級タイトルマッチが16日(日本時間17日)、サウジアラビアのリヤドで行われ、王者のニック・ボール(28、英国)がサム・グッドマン(26、豪州)に3-0判定で勝利して3度目の防衛に成功した。グッドマンはスーパーバンタム級の4団体統一王者の井上尚弥(32、大橋)との対戦を目の上のカットで2度も流していた元WBO&IBFの指名挑戦者。試合後のリングで「井上尚弥の名前もあがっているが誰と戦いたいか?」と聞かれたボールは「ビッグネームと対戦して統一戦に挑むことが目標」とまずはベルト統一に集中することを明かした。
またアンダーカードでは。WBA世界スーパーフェザー級3位の堤駿斗(26、志成)が、2016年リオ五輪代表の技巧派サウスポーのカイス・アシュファク(32、英国)に3回2分8秒TKOで圧勝した。堤は次戦で世界挑戦を計画している。
グッドマンのジャブとステップに翻弄される
苦戦したと言っていい。
スーパーバンタム級が主戦場でフェザー級も世界挑戦も初のグッドマンとフルラウンドの戦いにもつれこみ仕留めることができなかった。
ジャッジペーパーが「117-111」「118-110」「115-113」の順に読み上げられての3-0判定勝利。最初の2人のスコアを聞いた時点でグッドマンは敗戦を覚悟したような表情となり、逆に3人目のスコアを聞いた時点でボールは勝利を確信してガッツポーズを作った。
「私にとって最高のパフォーマンスだった。正直な感想として、何より重要なのは任務を遂行できたこと。そしてまだチャンピオンの座を維持できていることだ」
これが最高のパフォーマンスならボールの実力はたかが知れている。おそらく「まだチャンピオンの座を維持できていること」が本音なのだろう。
上背とリーチで勝るグッドマンはジャブをついて距離を取りステップワークで翻弄した。突貫小僧のボールがフックを振り回して突っ込んでいくが、グッドマンのステップバックと、カウンターで、打ち込んでくるボディショットが効果的で、王者の攻撃は空回り。なかなか突破口を開けなかった。5ラウンドに左アッパーからつなぐコンビネーションでやっとボールがペースをつかみ、7ラウンドからは、4連打、5連打、6連打とたたみかけるコンビネーションブローでボールがポイントで圧倒しはじめた。
それでもグッドマンのセカンドは「ペースを取り戻せ!」と何度もハッパをかけ、9ラウンドには足を止めて打ちあった。
グッドマンは、昨年12月24日に井上に挑戦する予定だったが、来日直前のスパーリングで左目上をカットして今年1月24日に延期となり、再度同じ古傷をカットして挑戦者がキム・イェジュン(韓国)に変更となり、井上戦が完全消滅。まったくの自業自得だが、井上戦のファイトマネーをあてにして、購入した家のローンが払えなくなり、ドッグフードで食いつなぐ貧困生活を余儀なくされた。だからこそこの試合では「絶対に世界王者になる」という気迫は見てとれた。だが、ボールは、11、12ラウンドのチャンピオンズラウンドに入っても攻撃の手を緩めなかった。
「それがどんな状況でもチャンピオンのやるべきことだ。必ずしもその状況(終盤の戦い)にたどり着くわけではないけどね」
至近距離で左構えにスイッチをしながら連打を浴びせ続け、グッドマンの逆襲を許さなかった。
ただいくらボールの攻勢点を評価したとはいえ「118―110」のポイント差はあり得ない。ダウンシーンも、明らかにグッドマンにダメージを与えるシーンもない“塩試合”の接戦で、ボールはモンスターのライバルとしての存在感を示すことができなかった。