
「9人左打者を並べた時点で中日の負け」井上采配が裏目に出た横浜DeNA藤浪晋太郎の5回1失点のNPB復帰戦をどう見る?…降板後失点の阪神時代“魔のパターン”は払拭できず白星逃すも
勝利投手の権利がかかる5回も、先頭の松葉にファウルで粘られセンター前ヒットを許して嫌なムードが漂った。だが、土田にバントをさせず最後は空振りの三振。続く岡林の打席ではパスボールで得点圏へ走者を進められたが、スプリットでセカンドフライ、樋口もカットボールでレフトフライに打ち取り、86球でリードをキープしたまま移籍初先発の責任を果たした。
池田氏は阪神時代からの変貌点を2つピックアップした。
「投球フォームが阪神時代には大きかったテイクバックも含めてコンパクトになった。メジャーでの動作解析などでマイナーチェンジしたのだろう。力みが消え引っかかるボールはあったが、抜け球はほとんどなく、制球難に苦しむ一面は消えてゾーンで勝負できるようになっていた。だから崩れてもおかしくない場面で崩れない。ストレートの最速は156キロが数球あり、ほとんどが150キロ台。8割程度の力感で、それだけの球威があれば十分。脱力のコツをつかんだようにも見えた」
フォーム改造による制球力の改善に加えてもう1点の変貌は組み立てだ。
「ふた回り目からはカットボール、ツーシームとボールを動かし始めた。これもメジャーの影響だろう。左打者の外からスライダー、カットを使い、たまにボールが内角へ引っかかってくるので、打者は踏み込めない。そういう打者心理をうまく使えていた」
ただ藤浪が阪神時代に指摘されていた“魔のパターン”だけは払拭できなかった。
6回、代わったばかりの中川が上林に初球を捉えられライトスタンドに同点アーチを放りこまれて藤浪の復帰星が消えた。さらに7回には宮城がつかまり2点を勝ち越された。
阪神時代に某コーチがこんな話をしていた。
「藤浪の後に中継ぎがつかまりやすい傾向があるんです。荒れ球とストレートの球威への緊張が解けて相手打者が2番手の中継ぎが簡単に見える。セットアッパー、クローザーにつなげるまでが要注意なんです」
またしてもその“魔のパターン”につかまった。これは藤浪の責任ではなくベンチの責任。池田氏は「横浜DeNAは阪神時代のその傾向をつかんでいなかったのか。まだ86球。もう1イニングいってもよかったのでは?」と5回降板の継投策に疑問を抱いた。
そして残る不安は「右打者が並んだとき」の対応だ。
池田氏はこう指摘した。
「右打者が並んだ時に、またボールが抜けてそこから崩れてしまうのか。特に走者を置いた場面での右打者への対応などを見てみたい。ただ藤浪は戦力になることを示したと思う」
しかし、牧の戦線離脱後に結束力を強めた好調打線は、8回に清水を攻めて二死二、三塁から林の2点タイムリーで4-4の同点に追いつき、延長12回に一死満塁からまた林の決勝犠飛で、激戦にケリをつけた。藤浪の力投が4連勝を呼び込んだと言ってもいい。
中6日で回れば藤浪の次の先発は24日の東京ドームでの巨人戦。クライマックスシリーズの出場権と、本拠地開催権を争うライバルとの一戦で藤浪が移籍初白星を手にすればチームにとって最高の展開となる。