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今季初先発のガンケルが1回に中田翔に満塁弾を浴びて連敗脱出の救世主にはなれなかった(資料写真)
今季初先発のガンケルが1回に中田翔に満塁弾を浴びて連敗脱出の救世主にはなれなかった(資料写真)

セ・ワースト9連敗の阪神が犯した「3つの間違い」…セオリーに反しては勝てない

阪神が3日の巨人戦(東京ドーム)に5-9で敗れ9連敗。ヤクルトが1979年に記録したセ・リーグの開幕連敗のワースト記録を更新した。今季初先発のジョー・ガンケル(30)が1回一死から中田翔(32)に満塁弾を浴び、7回にも守備の乱れで4点を奪われての完敗。阪神はなぜ勝てないのか。そして連敗脱出の出口はどこに。

不振の中田翔に満塁弾を打たれる

悪夢から目が覚めない。ライバル巨人に3タテを食らい、ついに開幕連敗は1979年に広岡達朗監督のヤクルトが喫した開幕8連敗のセのワースト記録を43年ぶりに更新した。

5-9のスコアだけ見れば完敗である。だが、一昨年まで阪神のコーチを7年間務めた評論家の高代延博氏は、「9点のうち8点は防げた。セオリーに反する3つのミスがあった。やるべきことをやった巨人と、やるべきことをやっていない阪神の差だ」と敗因を指摘した。

虎が犯した3つの間違い。  一つ目は、中田に満塁弾を浴びたガンケルの失投。ガンケルは1回一死から連続四球を与えて満塁とし中田に対して初球に外角高めのスライダ―を投げてレフトスタンド上段まで運ばれた。中田はここまで20打席ノーヒットだった。 「連続四球の後の初球を強打者が狙ってくるのはセオリー。まして中田は不調でタイミングを取ることに苦悩していた。こういうバッターに対し最も危険なのが半速球。ちょうどタイミングが合うのだ。そこに、おあつらえ向きの高めのスライダ―を投じたのだからバッテリーの配球ミス。今季初登板のガンケルは調子が悪く、変化球のキレもなく制球も定まっていなかった。ストライクが欲しかったのかもしれないが、東京ドームであることを考えても、なおさら初球は慎重になるべき。前日も丸、ポランコに打たれた本塁打はいずれも初球の高めのストレート。捕手は梅野ではなく坂本だったがチームとしての反省、対策を徹底していたのか疑問に感じる」と高代氏。  2番手の浜地が5回にも先頭の岡本に一発を浴びて3試合で8被本塁打。いくらホームランパークといえど打たれすぎだ。バッテリーの対策不足を指摘されても仕方がない。

二つ目、三つ目の間違いは、7回の守備に出た。  6回に糸井の2ランで3点差。巨人が連投を避けるため新守護神の大勢をベンチから外していた。信頼できるブルペンをまだ構築できていない巨人のメンバーからすると代役はビエイラや鍬原くらいしかいないため、先発の赤星が降板後は、まだどうなるかわからなかった。だが、7回に4番手のアルカンタラがふたつの四球が絡んで二死満塁のピンチを招くと、代打ウィーラーに三遊間へ勢いのないゴロを打たれた。中野が深い位置で取ると、迷わず二塁へ送ったが、滑り込んだ小林は余裕でセーフ。足でタイムリーヒットをアシストした小林は思わずガッツポーズをした。記録は内野安打。だが、高代氏は「一塁へスローすべきだった。記録に残らないエラーだ」と指摘した。

「一塁走者の小林はファーストリード、投球と同時に取るセカンドリード共に大きくかった。中野が事前にそれを確認していたかどうか。二塁は完全に間に合わない。一方の打者走者のウィーラーは内角球に詰まったため一塁へのスタートは遅れていた。クロスプレーだったかもしれないが、一塁へのスローを選択すべきだった。判断ミスだが、小林のリードを事前に確認する準備不足だったと思う。二死だから当然、一塁の大山はベースをカバーせず下がっていたが、小林のリードを少しでも小さくするために、ミットを叩いて警戒させるなど何かの工夫も必要だった」

そしてさらなるミスが重なる。  続く吉川のレフト前にふらっと上がった飛球に糸井がスライディングキャッチを試みたが、追いつかず、二死フルカウントでスタートを切っていたことに加え、打球処理にもたついたことも重なり、走者一掃。一塁走者の代走・立岡まで生還してしまったのである。いわゆるポテンヒットが3点タイムリーになったのだ。  高代氏は、左打者の吉川に対して深く守っていた糸井のポジショニングを問題にした。 「糸井の守備位置が深すぎた。もう1点もやれない状況で左打者。上を抜かれたら仕方がないという位置に出てきてよかった。ベンチの指示だろうが、ポジショニングのミス。阪神の守備もミスが目立つが、難しい打球には目をつぶっても、打ち取った当たりはアウトにしていかねばショックは大きい。また中野のカバーもワンテンポ遅れた。しっかりと打球を追いかけていなかった。糸井のポジションを事前に確認していたのかどうか。深いとわかっていれば、もっと追ってもよかった。防げた失点だろう」 記録に残らない隠れたミスがいくつも重なった。

案の定、巨人のブルペンは安定せず、8回に平内から佐藤の犠飛で1点を奪い、9回にはビエイラから木浪、梅野が連続アーチ。7回の悲劇さえなければゲームはどうなっていたかわからなかった。もう手の施しようがないほどの完敗ではないのが救いだろう。

明日5日からは甲子園に帰って横浜DeNAと広島との6連戦。連敗を止めてチームを立て直すにはもってこいのタイミングである。 高代氏は、トンネル脱出の方法をこう提言する。 「まずこの巨人3連戦の反省をしっかりとやること。次に基本の徹底。つまり準備だ。選手がもちろん考えるべきことだが、選手任せではなく、ベンチが”言われなくてもわかっていますよ“とうるさがられるほど細かい指示を徹底することも必要だろう。守備位置の確認、想定されるケースへの注意。配球の読み、逆に配球の確認など伝えることは山ほどある。やるべきことをやっていれば結果がついてくるだろう」先陣を切るのは西。昨季は対横浜DeNAに2試合しか登板していないが、1勝1敗防御率0.64と相性がいい。今季初登板となった3月29日の広島戦では6回途中1失点とゲームは作った。プロ14年目のベテランに連敗ストップを託す。出口のないトンネルはない。

(文責・論スポ、スポーツタイムズ通信社)

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