
「井上尚弥と戦うピカソは決して弱くはない。でもすぐ終わるんちゃいますか」7月に“戦った男”亀田京之介が12.27サウジでWBC1位を迎え討つモンスターの戦いに説得力のある証言
亀田もポイントを奪われているのはわかっていた。勝つには、一発逆転しかなかったが、「ボディでスタミナを削られていて」勝負にいけなかった。
ただ「正確性はあったけどパンチ力はなんもなかった。どんだけパンチをもらっても倒れることはないなと思った」という。
亀田は2月には、元2階級制覇王者の“悪童”ルイス・ネリ(メキシコ)と敵地に乗り込んで対戦して、2度ダウンを喫して7ラウンドTKO負けしている。ネリは昨年5月に井上に挑み1ラウンドにダウンを奪いながらも6ラウンドTKO負けして以来の再起戦だった。亀田はピカソには、左のボディブローだけは効かされたが、何発もクリーンヒットをもらいながらも、ダウンはなかった。
ピカソのすべてを10ラウンドで知った亀田は、モンスターvsピカソの1戦をこう予想した。
「すぐに終わるんとちゃいますか。オレは(井上が)倒すと思いますね。前半で終わらせるんじゃないですか。5ラウンド以内。ピカソがオレとやった時みたいな感じでくれば、そうなりますよ」
井上は9月14日の名古屋でのムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)戦で、勝ちに徹した技術戦を仕掛けて、トップランク社のボブ・アラムCEOが「コンプリート(完璧な)ファイト」と評した試合内容で3-0判定勝利した。
「倒したくても倒さない」とブレーキをかけていた。それは最強挑戦者の一発を警戒しての戦略で、ピカソにその脅威がなく、ただの技術戦となるのであれば、井上は、そのブレーキを解除するだろう。井上は「倒すのは流れの中で」と慎重に言葉を選んでいたが、大橋秀行会長は「技術を見せながら、最後はKO決着。(ピカソ戦では)そういう試合を期待している」とコメントしていた。
亀田は、これまでは井上に対して批判的なコメントも発していた。そのリスペクトを欠く、生意気な発言は、時にはSNSを炎上させもした。
だが、ネリ、ピカソ戦の連敗で、挫折を味わい、SNSでバッシングを浴びて「ここで負けているようじゃ世界なんか取られへんと病んだ」という。
落ち込み、一度は引退さえ考えたという経験を経て亀田の考え方は変わった。
5月に結婚し6月に長男の虎之介君が誕生したことも、亀田のボクシング人生にとって大きなエポックとなった。
「今までの自分を振り返ると、何してたんやって思いますよ。ちょっとボクシングを舐めていたというか…井上尚弥チャンピオンへの発言もそうですしね。今になってみれば言わんで良かったんとちゃうかなということを言っていました」