
「負けていたらチームの雰囲気が一気に下がる」森保ジャパンが南米強豪パラグアイに土壇場で追いつき2-2ドローにした価値
出場11試合目の小川は、代表通算ゴールを2桁の10得点に乗せた。これは釜本邦茂さん(故人)が1966年にマークした、12試合10ゴールを更新する日本代表史上で最速の2桁得点到達。8月に死去した釜本さんへ、キックオフ前に黙祷を捧げた一戦での記録更新に、小川はこんな言葉を残している。
「プレーを見る機会はなかったですけど、釜本さんという名前はいつも自分の耳に入っていました。ただ、釜本さんを超えたわけでも、ましてや得点数を上回ったわけでもない。これに一喜一憂せず、満足することなく前進していければと思う」
試合はそのまま2-2で引き分けた。連敗こそ回避できたものの、9月シリーズから3試合続けて白星から見放されている。それでも森保一監督(57)は、FWの選手がゴールでそろい踏みした点がパラグアイ戦の価値になると高く評価した。
「アジア予選後にアジア以外の大陸のチームと国際親善試合をしている中で、やはりレベルが違うと感じている。だからこそ個人でもチームでも、アタッキングサードでさらにシュートまでつなげられるようにしていかなければいけない。その中で、私たちが『点を取って欲しい』と思っているFWの2人がしっかりと結果を残した。今後の戦いにおいて良い意味で軸がしっかりしてくると思う」
取るべき選手がゴールすれば、おのずとチームの士気も上がる。しかもパラグアイの堅守をこじ開ける上で小川は「豪快」な、上田は「劇的」な意味合いをそれぞれのゴールに添えた。身長186cmの高さとパワーを誇る小川。そして、非凡な得点感覚を持つ絶好調の上田。苦しくとも耐え忍べば、最前線の頼れる男たちが必ず報いてくれる。信頼関係をさらに高めていくための第一歩が刻まれた。
パラグアイに勝ち越された直後の後半21分から投入され、攻撃のタクトを振るい続けたMF鎌田大地(29、クリスタル・パレス)が言う。
「追いついたのは非常にポジティブ。こういう形で負けるとチームの雰囲気も一気に下がる。だからこそ評価できるし、次の試合にもつながると思う」
14日に味の素スタジアムで対峙するブラジルはこの日、ソウルで韓国代表と対戦して5-0で圧勝した。日本の対戦成績は2分け11敗。森保ジャパンは2022年6月に国立競技場で対戦し、スコアこそ0-1ながら内容では圧倒されて負けている。パラグアイ戦で示された価値を真っ向からぶつける上で最高の舞台が整った。
(文責・藤江直人/スポーツライター)