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急逝したチームOB工藤さんに捧げる広島の初V。現役時代の背番号「9」をDF塩谷司、「50」は柏時代の1年後輩の控えGK川浪吾郎が掲げた(写真:森田直樹/アフロスポーツ)
急逝したチームOB工藤さんに捧げる広島の初V。現役時代の背番号「9」をDF塩谷司、「50」は柏時代の1年後輩の控えGK川浪吾郎が掲げた(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

急逝した元チームメイト工藤壮人さんに捧げる広島のルヴァン杯初優勝…「今日の僕たちは工藤と共に戦った」

  YBCルヴァンカップ決勝が22日に国立競技場で行われ、サンフレッチェ広島が試合終了間際の連続ゴールでセレッソ大阪を2-1で逆転して初優勝をもぎ取った。後半8分にミスで先制点を献上した広島だったが、後半アディショナルタイム6分、11分にFWピエロス・ソティリウ(29)が連続ゴール。奇跡の逆転劇にベテランのMF青山敏弘(36)、キャプテンのDF佐々木翔(33)らは声を詰まらせながら、前日に急逝した元チームメイト、工藤壮人さん(享年32)へ優勝を報告した。

 試合前の黙祷と工藤コール

 

 広島ひと筋で19年間プレーするバンディエラ、36歳の青山はチームに手渡されたばかりのルヴァンカップを大事そうに抱えながら、試合後の取材エリアに姿を現した。
「2点目が入った後に最後、出てやろうと思って(ユニフォームに)着替えていたんですけど、もう交代(のカード)を3度切っていて無理だったんですよ」
 守備固めでも、時間稼ぎでもいいから国立競技場のピッチに立とうと準備するもかなわなかったルヴァンカップ決勝。リザーブのまま3度目の挑戦にして初めて手にしたルヴァンカップを、日本代表でのプレー経験も持つ大ベテランは照れくさそうに、かつ満足そうに振り返った。
 延長戦に入らない限り、選手交代はハーフタイムを除いて最大3回。広島はリードを許した後の後半18、35、45分に計4人の選手を投入していた。戦況を忘れるほど高揚していた青山だったが、質疑応答のなかで一瞬だけ声を途切れさせている。
 J3のテゲバジャーロ宮崎でプレーしていた元チームメイトで、昨日に急逝した元日本代表FWの工藤さんへの思いを尋ねられた直後だった。
「一緒にサッカーをさせてもらって、もちろんプレーヤーとしてもトップだったけど、それ以上に人間として僕のなかでリスペクトできる人を失ったのは苦しい。家族のことを含めて、どのように表現したらいいかわからないけど、今日の僕たちは工藤と共に戦った。それは間違いない」
 工藤さんは小学生年代から心技体を磨いてきた柏レイソルから、アメリカMLSのバンクーバー・ホワイトキャップスをへて2017シーズンに広島に加入した。
 当時の広島は過渡期にあり、シーズン途中で森保一監督(54、現日本代表監督)が退任。J1残留争いを余儀なくされ、一転して2018シーズンは城福浩監督(61、現東京ヴェルディ監督)のもとで優勝争いに加わり、最終的には2位でフィニッシュした。
 喜怒哀楽を共有した2年間で工藤さんが見せ続けた姿を、青山はいまも鮮明に覚えている。
「フォワードだったので、自分に対して要求してくる姿は本当に頼もしかった。誰に対しても変わりなく接してくるのは、自分も含めてみんなができることじゃない。プロフェッショナルとはああいう選手なんだとみんながわかっている。本当にいいやつなんですよ」
 所属する宮崎から、工藤さんの突然の訃報が発表されたのは21日深夜。青山やキャプテンの佐々木を含めて、広島の選手のほとんどは午後1時5分に国立競技場でキックオフ予定のセレッソとの決戦に備えて、宿泊先のホテルですでに就寝していた。
 目が覚めてすぐに受けたショックを、ヴァンフォーレ甲府をへて2015シーズンから広島でプレーする佐々木は、神妙な表情を浮かべながら振り返っている。
「感情の整理もそうですけど、正直、言葉で表すのも難しいかった。隠していてもしょうがないので言いますけど、黙祷のときには涙が流れてきてしまうほどでした」
 キックオフ直前に審判団、両チーム、関係者、そしてスタンドを埋めた4万人近い大観衆で故人を偲んだ黙祷時に、佐々木は思いをこらえきれなかった。しかし、黙祷を終えた国立競技場には両チームのファン・サポーターから「クドウ、クドウ」とコールが響いた。

 

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