• HOME
  • 記事
  • 格闘技
  • 「やりましょう!」井上尚弥がSNSを騒がせた「来年5月は中谷戦かフェザー挑戦か」問題に結論…ピカソに圧勝も「倒せず悔しい。体と気持ちが一致せず」KOできなかった理由は?
井上尚弥はピカソに圧勝もKOはできず(文責・山口裕朗)
井上尚弥はピカソに圧勝もKOはできず(文責・山口裕朗)

「やりましょう!」井上尚弥がSNSを騒がせた「来年5月は中谷戦かフェザー挑戦か」問題に結論…ピカソに圧勝も「倒せず悔しい。体と気持ちが一致せず」KOできなかった理由は?

 12ラウンドで珍しく最後の最後に応戦して見せたピカソをジャッジの2人が支持した。そして無情のゴング。ピカソは、まるで勝者のようにまた両手を突き上げて、井上はなんのリアクションも見せずに相手陣営への挨拶だけを行い、コーナーへ下がった。
 ジャッジが読み上げられた。1人がフルマーク。1人が119―109、一人が117-111。このジャッジは9、11、12回の3つをピカソにつけていた。
 1ラウンドからすべてのラウンドで圧倒した。鋭いジャブ、ブロックの横のスキを狙うフック、左ジャブから右アッパー、上下、対角線に放つコンビネーション、ノーガードで挑発までしたが、必要以上に高くガードをあげ、ボディショットにも身構えて耐えるピカソのディフェンスを破壊することはできなかった。
 前日に大橋秀行会長は「判定までいくのが目的じゃなくて、ベルトを獲りに向かってきて欲しい」と危惧していたが、ピカソは最後まで立っていることを目的としていた。ほぼパンチを打ってこないので打ち終わりの狙いようもない。
 ピカソはアステカの戦士なんかではなかった。
 井上は試合後の会見でこう言葉を絞り出した。
「正直悔しい。期待に応えられなかった。倒したかったという気持ちは強い。ピカソのディフェンスが上手かったというところですね」
 真吾トレーナーは、ピカソが攻撃をせずにディフェンスだけの集中してくるケースを想定してどう崩すかのパターンを練りに練ってきた。だが、その練習成果を出すことができなかった。
「良くなかった」理由を井上はこう明かす。
「ボクシングというより僕の気持ちですかね。集中力であったり、いまいち体と一致していなかった。そこですかね。ポイント的には離れていたと思うがやりたいボクシングと気持ちが一致していなかった。なぜこういう形になってしまったのかをまた改めて考え直す必要がある」
 おそらく1、2ラウンドに高速の上下の5連打を浴びせるなど会場をどよめかせ、何ひとつ反応できなかったピカソを見て、井上は、あまりもの力の差を感じて集中力が途切れたのだ。
 試合前にはルールミーティングで確認していたはずのバンテージの巻き方にケチをつけられ巻き直した。そのイライラも強引さにつながっていたのかもしれない。
 そしてこうも言った。
「これがボクシング。噛み合う、噛み合わないの中で、倒すことができるか、できないか。この先もこういうこともある。その中で、今後、倒し切ることをひとつの課題として磨いていきたい」
 キャリアで初めて2試合連続の判定勝利となった。9月のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)戦とは、同じ判定でも中身も相手も大違いだが「階級が上がり倒し辛くなっているのでは?」とリング誌の記者に聞かれ「そうは感じない」と返した。
 リングサイドにいた堤聖也は、この相手を倒すことがいかに難しいかを力説した。
「今ままではそういう相手、例えばバトラーでも倒してきたからどっかで尚弥さんが爆発するところが来るかなと思っていましたが、あれだけ守りに入られると難しいですよね」
 最後の勝負ラウンドの12ラウンドに右をほとんど出さなかったことが筆者は気になったが堤も同じところに目をつけていた。
「わかんないですが、序盤から右手を気にしていましたよね。回転で腕を伸ばすパンチより、殴るようなパンチが多かったので、肘でも痛めたのかと気にはなっていたんです。判定になったからそう見えただけかもしれませんが…」

 

関連記事一覧