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このフェイスオフの時のピカソの目が泳いでいたという(写真・Matchroom Boxing/Mark Robinson)
このフェイスオフの時のピカソの目が泳いでいたという(写真・Matchroom Boxing/Mark Robinson)

井上尚弥サウジ防衛戦の真実①「ピカソの目が泳いでいた」…大敗なのにメキシコの挑戦者がガッツポーズをした裏にあったのは…

 プロボクシングのスーパーバンタム級の4団体統一王者、井上尚弥(32、大橋)が昨年12月27日にサウジアラビアでWBC同級2位のアラン・ピカソ(25、メキシコ)を完璧に封じ込んで3-0判定勝利した「The Ring V: Night of the Samurai」の波紋がまだ広がったままだ。サウジで何が起きていたのか。現地取材した筆者が緊急連載でその真相に迫った。

 約1分に及ぶフェイスオフだったが…

 その姿はあさましかった。
 2025年12月27日、サウジアラビアの首都リアド。
 ニューヨークのマンハッタンをイメージして造られた娯楽施設「リアドシーズン」のブルーシティ内にあるムハマド・アブド・アリーナは、本来2万人収容の観客席を3000人に設定していたが、神社の鳥居をイメージしたオブジェや、桜の木、スクリーン映像を派手に組み合わせて幻想的な空間を演出していた。
 井上が入場時に「凄いですね」と感心したほどだった。
 アリーナ席の20列目付近から数列柵で区切られた記者スペースで観戦していた筆者のノートは、井上のフルマーク。実際、ジャッジの一人はフルマークつけていた(あとの2人は119ー109、117ー111)。だが、試合終了のゴングが鳴ると同時にピカソは、まるで勝者のように両手をあげて、ガッツポーズをしたのだ。
「奴らにリスペクトは感じない。終わって気持ちがすっきりしない。あんな対戦相手は初めて。育ちの悪さが出ている」
 羽田空港での帰国会見で井上は珍しく怒りを口にした。
 疑念の残る王者の脱水症状で世界戦が中止となった寺地拳四朗も「あれはおかしいですよね」と感じたほどの敗者の態度だった。
 大橋秀行会長は怒りを通り越してあきれていた。。
「最後まで立っていることだけを目的にしていたんだろうね。大敗しているのにガッツポーズって初めてみたよ。試合前に言っていただろう?立っていることだけを狙うんじゃなく、覚悟してかかってきて欲しい。と。それは恐れていたことなんだけど勝とうとせず立っていることだけでOKなんてボクシングじゃない。アステカの戦士じゃなかったね」
 試合の2日前に行われた公式会見でピカソは「サムライナイトではなく、アステカナイトにしてやる」と、4団体王者を挑発し、珍しく井上が「メキシコにベルトが帰ることは100%ありません」とやり返して、翌日に「あまり調子にのんなよ」と振り返ったほどだった。
 だが、リング上でのピカソはガードをこれまでよりも高く上げて常にボディのパンチを警戒してのディフェンス一辺倒。何もしてこなかった。
 父の井上真吾トレーナーはピカソの心情をこう読み取った。
「相当なプレッシャーがあったんですよ」
 実は、前日のセレモニー計量が行われた後のフェイスオフでのピカソの異変を真吾トレーナーは見逃していなかった。
 1分近くに及ぶ異例のフェイスオフ。記憶の残る限り、井上の過去最長時間のフェイスオフだった。
「目がぱちくりして泳いでいたんですよ」
 横からピカソの様子をチェックしていた真吾トレーナーは、舞台上で大橋会長と、ヒソヒソ話をしていたが、「びびっていますね」と、確認していたという。

 

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