「そいつを追い出して!」井上尚弥をイラ立たせたピカソ戦直前の控室での“バンテージいちゃもん事件”の真相とは?
さらに悪いことに主催者側が用意した日本人女性の通訳がボクシングにまったく無知で、互いのコミュニケーションもうまくいっていなかった。
米国の一部の州や一部の海外では直接肌に貼るテープをルールで禁止しているローカルコミッションも少なくない。井上の場合はまったく違うが、JBCも含め「テープ、バンテージ、テープ、バンテージ」と必要以上に重ねて巻く行為は「スタッキング」と称して禁じられている。「石こう」のように拳が固くなるとの指摘があるからだ。
実際、井上も過去に2019年5月に英国グラスゴーで行われたWBSS準決勝のエマニエル・ロドリゲス戦では、そのルールに従ったし、2023年7月のスティーブン・フルトン戦ではJBCのローカルルールでは、肌に直接貼るテーピングが許されていたのにもかかわらず、フルトン陣営のトレーナーに「このままじゃリングに上がらない」とクレームをつけられたため井上陣営が“大人の対応”を見せて相手が納得するようにまずガーゼを先に巻く手順に変更したことがある。
それでも試合当日にまたクレームをつけてきて大混乱となったのだが、そういう経験のある井上陣営では、特に海外では、いつものバンテージの巻き方に「ダメ出し」を出される場合の備えがあった。
それゆえ前日のルールミーティングで確認を取っていたにもかかわらず、突然の「ダメ出し」を食らったのだから井上がイラつき陣営が困惑したのも無理はない。
実は、サウジアラビアのコミッションが脆弱のため今回は隣国のドバイや世界各地からオフィシャルを呼び寄せていた。ルールミーティングに出席していないのにクレームをつけた人物もラスベガスコミッションから派遣されていた。ラスベガスは、直絶肌にテーピングする方式を認めていないので、その固定観念もあったのかもしれない。
また前日のルールミーティングそのものが“いい加減”で、通常の場合、世界戦ごとに別々に行われるがその時点では行われる予定だった寺地拳四朗のIBF世界スーパーフライ級タイトルマッチと、井上の4団体統一戦が細かいルールが違っているのにもかかわらず同時に一緒くたに行われたという。これも異常だ。
今回井上はまだしっかりと整備されていないサウジアラビアのローカルコミッションによる大会運営の杜撰さの犠牲になったとも言える。
結局、井上ももうこれ以上やりとりをしてもラチがあかないと思ったのだろう。すべてのテーピングをはがして、もう一度、オフィシャルに言われるままに巻き直した。

