亀田興毅氏が仕掛けるプロボクシングの4.16代々木ダブル世界戦で重岡兄弟が挑む世界初の偉業とは？

　プロボクシングのミニマム級のダブル世界戦が4月16日に東京の代々木第2体育館で開催されることが7日、都内で発表された。元世界3階級制覇王者の亀田興毅氏（36）がプロデュースする「3150FIGHT」の東京初上陸大会で、WBC世界ミニマム級4位の兄の重岡優大（25、ワタナベ）が同級王者のパンヤ・プラダブスリ（32、タイ）に挑戦し、IBF世界同級4位の弟の銀次朗（23、同）が同3位のレネ・マーク・クアルト（26、フィリピン）との暫定王座決定戦に臨む。兄はプロ7戦目にして初挑戦。弟は1月の世界戦で不可解な無効試合に終わった正規王者のダニエル・バラダレス（28、メキシコ）との再戦がIBFから指令されていたが、耳のケガが治っていないことを理由に延期となり暫定王座決定戦となった。兄弟世界王者は日本では亀田3兄弟、井上尚弥、拓真(大橋）の2例があり、世界ではウクライナのキーウ市長として活躍中のクリチコ兄弟など多数あるが、同日、同階級での兄弟世界王者誕生となると世界初の快挙となる。

　亀田3兄弟をお手本に小さい頃からスパルタ教育を受ける

　揃いのブラックスーツ。2人がコーディネイトしたわけではなく、試合を独占ライブ配信するAbemaが用意したものだが、世界へ挑む重岡兄弟独特の“凄み”を醸し出していた。
　2度目の世界挑戦となる弟の銀二朗が、「2人で同時に世界を獲って一緒の夢を叶えられるのは熱い。こんな最高の舞台はない。笑って終われるように万全に仕上げていきたい」と語ると、サングラスをかけた世界初挑戦の兄の優大も、「弟と2人で格闘技を始めて20年。人生をかけてやってきた。俺達が世界王者にならないのなら誰がなるんだ？という思いでやってきた。別々に世界戦をやるよりも、2人同時の方が、パフォーマンスもコンディションもよくなる」と兄弟での世界奪取に気合を込めた。
　デンマークのジョニー＆ジミー・ブレダル兄弟が、1992年9月に同日に世界奪取に成功した例があるが、ジミーがWBO世界スーパーフライで、ジョニーがWBO世界スーパーフェザーで階級が違い、同日、同階級となると世界初の偉業となる。
　2人は故郷の熊本で幼い頃から父のスパルタ教育で鍛えあげられた。兄曰く、「亀田史郎さんのような父親でテレビで見ていた亀田3兄弟をお手本にしていた」そうで、興毅氏を真似て、小、中まで坊主頭だったという。
　自宅の車庫にサンドバッグを吊り下げ、週に一度は、一般のトレーニング施設に通い、手押し車などの血みどろの特訓。兄は、うさぎ跳びのノルマが激しすぎて、左ひざが壊れて手術したほど。
「心の底からこれで世界王者になれなかったらやばい」と思う日々を過ごして、弟は、熊本の開新高で5冠、兄は開新高―拓大でアマ5冠、先にプロ入りした弟が、WBOアジアパシフィックミニマム級、日本ミニマム級王座を獲得すると、東京五輪出場を断念して、後からプロ入りした兄も、弟が返上した2つのタイトルを継承した。
　2人には、高校時代の県予選の決勝で、兄弟対決をせねばならなくなり、1ラウンドのゴングが鳴ったと同時に弟の陣営がタオルを投げて棄権した苦い経験がある。「別にやっちゃってもよかったんだけど」と兄は笑うが、今でもスパーリングは封印。中学生の頃、スパーリングが途中から喧嘩になり頭突きの応酬で、2人とも流血してから、やらなくなったという。
　それでも銀二朗が、「兄は生き物的に強そう。絶対に負けない強い気持ちがある。怖いですよ」と兄を称えると、優大も、「隙がない。完成度の高さは俺より弟が上」と返した。
　今年1月、先に世界戦チャンスをつかんだのは弟の方。だが、その世界戦は悪夢だった。優位に進めていたが、パラダレスに偶然のバッティングによるダメージを「耳が聞こず足がふらつく」とアピールされ、レフェリーが、これを認めてしまい、3回で、まさかの無効試合。納得のいかないプロモーターの興毅氏は、すぐさま再戦契約を結び、IBFも再戦指令を出したが、耳が治っていないことを理由に延期を申し入れられた。
　本来なら王座を剥奪される案件だが、IBFは、その言い分を認め、今回はクアルトとの暫定王座決定戦をセット。勝者がパラダレスと統一戦を行うことになる。この日の会見では、パラダレスのコメントが紹介された。